2015年3月20日(金)
雇用促進住宅 なぜ追い出し迫る
利益剰余金を国庫に納付 「計画修繕の廃止」を明記
全国で約12万戸(2014年末現在)ある雇用促進住宅は07年の閣議決定で、21年度までに「すべてを処理する」とされています。廃止決定されていない住宅に今年2月末、「雇用促進住宅の譲渡・廃止に係るお知らせ」の文書が突然配布され、寝耳に水の入居者は不安を抱えたままの生活を送っています。
(日本共産党国民運動委員会・高瀬康正)
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雇用促進住宅は、すでに190住宅(団地)が地方自治体に譲渡、23住宅(同)が民間に売却され、70住宅(同)が空き家になり更地に。約6万戸が新規入居を受け付けない「廃止住宅」になっています。
入居は高齢・単身世帯多い
大阪府高槻市のJR高槻駅から歩いて20分ほどにある服部住宅にも「お知らせ」が配布されました。築46年で6棟300戸、82戸の空き家があります。5階建ての鉄筋コンクリート造りで間取りは2K、入居者は高齢・単身世帯が多い。
「いまさら出て行けと言われても困る」と話す男性(80)。福岡県出身で自動車メーカーなどに勤め、現在は夫婦2人世帯です。「40年住み続けている。わずかな年金生活。5年ほど前に耐震工事も終わり、安心して老後を送れると思っていた。連れ合いが階段を踏み外し、けがをしたが、滑り止め工事をしてくれたのでほっとしていたところだ」といいます。
女性(81)は1人暮らし。「定年で退職し10年前、ここに来た。亡夫の遺族年金暮らしで、家賃が安いので助かっている。『お知らせ』にびっくりし、追い出されたら近くのUR賃貸住宅に申し込もうと思っている」と話します。
管理する独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構はなぜ追い出しを迫るのか―。
一つは10年度で628億円あった利益剰余金が11年度に166億6千万円と激減していることです。この理由を厚労省の担当者は、「独立行政法人改革の一環で利益剰余金を400億円、国庫(雇用保険会計)に納付したから」と説明しています。本来ならこの剰余金は新規建設や将来の建て替え費用などに充てられるべきものです。
耐震補強工事遅れなど懸念
もう一つは、閣議決定(07年12月)の「独立行政法人について講ずべき措置」で「(雇用促進住宅の)計画修繕の廃止」を明記したことです。これによって07年度226億円だった修繕費が08年度には88億円と138億円も減っています。この結果、計画的に行うべき外壁塗装やベランダ・階段手すりの塗装などが行われていません。また安全にかかわる耐震補強工事の遅れなども懸念されます。
雇用促進住宅 当初は、石炭から石油へのエネルギー転換に伴って生まれた大量の離職者の転職を促すための住宅とされました。その後は職と住居を求める人々に広く供給されてきました。特に08年以降、リーマン・ショックによる派遣切りで職と住居を一挙に失った人々に供給されました。東日本大震災の被災者の当面の住まいとしても重要な役割を果たし、現在でも3千戸に被災者が生活しています。