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2015年3月9日(月)

「大阪都」構想とは何か

ジャーナリスト 吉富有治さん

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 「大阪都」構想とは何か―。同構想に基づき大阪市を廃止し五つの特別区に分割することの是非を問う住民投票が5月17日に実施される見通しです。市民に重い判断が迫られる中、取材を続けてきたジャーナリストの吉富有治さんは次のように解説しています。


「特別区で理念実現」は無理

大阪市再編と景気 別の話

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 「大阪都」構想とは何か。大阪維新の会が政策の一丁目一番地として掲げる最大の目標です。もともと、そのキモは三つあります。

 (1)大阪の経済成長戦略(2)府と市の二重行政の解消(3)ニアイズベター、住民に近い基礎自治体の実現です。

 これが実現されるなら、それに越したことはありません。だから私も初めは賛成していました。

 しかし、取材を進めていくうちに、今言われているような特別区の設置でその理念を実現するのは無理だと思うようになりました。

 先ほどの意味での「都」構想と、今度の住民投票で是非が問われる特別区設置協定書は、まったくの別物です。

 協定書には、政令市である大阪市を廃止してつくる五つの特別区の区域や名称、府と区の事務分担などが書かれているだけです。存続する大阪府の名称も府のままで「大阪都」とは言わないだけでなく、「都」構想が本来もつであろう理念、政策というものも、一切ありません。

欠ける成長戦略

 一番欠けているのが経済成長戦略です。

 景気・経済は、政策や外部的な経済環境の変化など都市のカタチとはまったく別の論理で動いています。政令市を特別区に再編したからといって良くなるわけでもありません。

 橋下さんが知事のときにつくった大阪府自治制度研究会の最終とりまとめにも「経済と大都市制度の因果関係を明確に論証することは困難」と指摘されている通りです。

 次に「二重行政の解消」です。二重行政とは何か。行政学的にいうと、単に府と市に類似の施設や事業があるというだけではなく、同時に無駄が発生する場合だと思います。

 府立体育館と市立体育館は無駄でもない。図書館もそう。結局、あまりなかったのです。

 維新の会は、府と市がだいぶ前に競い合って建てた、りんくうゲートタワービルと旧WTCビルが二重行政の象徴だと言いますが、基本的には政策の誤りにすぎません。計画や需要の見通しが甘かったのですから府市が協調して一本にしていても破綻したはずです。

 失敗への反省もなく、なんでもかんでも二重行政だと言って大阪市をなくせば無駄がなくなるかのような主張にとどまっているなら、「都」構想で知事がスピーディーに決められる体制ができたとしても政策が成功するとは限りません。都知事だった石原さんが新銀行東京をつくって失敗したのがいい例です。

巨額の初期費用

 ニアイズベター、住民に近い基礎自治体は実現するのでしょうか。橋下さんはよく270万人の市民を自分一人でみることはできないと言います。特別区になると5人の公選区長でみることができ、行政が近くなると。これは、天王星より木星の方が近いと言っているのと同じで、どちらも遠いのは変わりません。

 私たちが普通、市民の声を届けるといったらどこに行きますか。まず区役所の担当者です。あるいは市議に相談します。その議員の数は、五つの特別区に分かれても総数で今の市議会の定数(86人)と変えないというのがいまの協定書です。

 これで、再編の初期費用だけで680億円はかかるなんて、コストパフォーマンスが悪すぎます。

 一度否決された協定書が、公明党の方針転換で住民投票にかけられようとしています。背景には、維新を取り込みたい官邸と創価学会との間での密約があったようです。大阪のことは大阪で決めるはずが中央から大阪の公明党を動かした。これのどこが地方分権なのか。私も憤っています。ぜひ投票に行っていただければと思います。


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