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2015年1月16日(金)

釣り船に衝突 海自おおすみ事件1年 広島

“無謀操縦の犠牲”

遺族 真相究明へ起訴求める

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 「(船長の)高森に落ち度はない。このままでは浮かばれない」「でっかい船に木の葉のようなボートが巻き込まれた」。広島県の瀬戸内海で釣り船「とびうお」の船長ら3人を死傷させた海上自衛隊の大型輸送艦「おおすみ」の衝突事件は15日で1年が経過しました。長年寄り添ってきたかけがえのない家族を突然失い、その真相が究明されない悲しみ、いらだちを背負う遺族らの思いは――。 (山本眞直)


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(写真)広島県内の漁港に保管されている「とびうお」。遺族などから「保存して自衛艦による事故再発防止や平和で安全な海に役立てたい」などの活用が提案されています=14日、江田島

 広島海上保安本部は昨年6月、輸送艦長らと釣り船船長の双方を「見張り不十分」として業務上往来危険、同過失致死傷の容疑で広島地方検察庁に書類送検。しかし同地検はいまだに処分を決めていません。遺族らは「公の裁判で真相を究明したい」と起訴処分を強く求めています。

“海の難所”

 衝突事件は昨年1月15日、全国有数のレジャー拠点で、釣り船など大小の船舶がひんぱんに行き交う“海上交通の難所”とされる海域で発生しました。

 海保は、艦橋で操船していた輸送艦の田中久行艦長(2等海佐)と西岡秀徳航海長(2等海尉)の「とびうお」に対する見張りが不十分で、動静を十分に把握せずに操船した過失により衝突、転覆させたと断定。乗船者2人を死亡させ、釣り客1人に肋骨(ろっこつ)骨折の傷害を負わせたとして送検しました。

 「とびうお」の高森昶(きよし)船長=当時(67)=にも「周囲の見張りを怠り、適時適切な操船を行わなかった」と指摘しました。

 「とびうお」に乗船し、衝突で海に投げ出され救助された釣り客の寺岡章二さん(68)は「おおすみが後方から接近して衝突した。高森船長に落ち度はない」と海保の事情聴取に証言しています。

 釣り客の大竹宏治さん=当時(69)=も救助されましたが18時間後に病院で死亡が確認されました。出血性ショック死と溺死でした。衝突による衝撃の大きさが伝わります。

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(写真)「衝突してきたのはおおすみ。このままでは高森は浮かばれない」と悔しさをにじませる栗栖紘枝さん=13日、広島市内の自宅

「高速なぜ」

 「おおすみ」の衝突直前の速力は17・2ノット。現役自衛官は本紙の取材にこう答えています。「この速度は第一戦速とよばれる作戦命令による戦闘モードで、あの海域でなぜこんな高速なのか」。通常の巡航速度は12ノットといいます。

 高森さんと30年間、同居してきた栗栖紘枝さん(71)は「裁判で高森の名誉が回復されないうちは納骨できない」と、自宅の仏壇に置かれた骨つぼと遺影に向かって悔しさをにじませました。

 「高森は17ノットという自衛隊の無謀な操縦の犠牲になった。日増しに募る1人暮らしのさみしさを必死に耐えています」

 大竹さんの妻、たみ子さんは持病が悪化、入退院を繰り返す日々です。「自衛艦おおすみ衝突事件の被害者を支援し真相究明を求める会」の皆川恵史事務局長との面談でたみ子さんは、痛切な胸中を明かしました。郷里は福島県です。

 「農業をしていた弟が、原発事故の風評被害で自殺した。『息子は国に殺されたも同然だ』と母はくやしがった。今度は私の夫まで国に殺された」

 同会は15日、コメントを発表し、こう強調しました。「亡くなられた方々の無念の思いにこたえるためにも、一日も早く広島地検によって公判請求がされ、事故の真相が徹底的に解明されることを改めて強く望む」


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