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2014年11月6日(木)

2014 とくほう・特報

景気回復どころか“安倍不況”

それでも消費税10%に増税か

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 消費税を8%にした今年4月以降、日本経済と国民生活は大きく変化しました。安倍首相の経済政策「アベノミクス」で景気が回復するどころか、激しい消費の落ち込みで“安倍不況”ともいえる状況です。安倍内閣は消費税の再増税に向けて点検会合を始めましたが、これでもなお、来年10月に増税するというのか―。 (本田祐典、内藤真己子)


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(写真)朝一番のスーパーで買ってきた半額の刺し身など割引品を手にする伊藤やす子さん=10月30日、埼玉県熊谷市

半額狙い「朝の常連客」

 安倍政権がアベノミクスを実行に移して1年半。首相は「暗い空気は一変した」と自賛しますが、国民生活の実態はかけ離れています。

 埼玉県熊谷市の国道沿いにある大型スーパー。午前9時、開店を待っていた「朝の常連客」が次々と吸い込まれていきます。

 市内で夫と暮らす伊藤やす子さん(63)も、その1人です。まっしぐらに鮮魚売り場へ向かいました。

 「あった」。赤い半額シールが貼られた刺し身をすばやく買い物かごに入れました。オーストラリア産養殖マグロ374円。「久しぶり。お父さんが喜ぶ」

 朝一番の買い物は、前日に売れ残った生鮮食品が値引きされるから。「半額が一番いい。2割引きじゃ高いから、あんまり買わないの」

 64歳の夫が日雇いの建設作業で働き、収入は月十数万円。親の代からの金属塗装業はここ数年で取引先が次々とつぶれ、廃業に。操業資金の担保だった自宅も失い、友人宅に間借りしています。

 水光熱費も含め家賃が月2万円、滞納する市民税と国保税の分納が計月1万5400円、軽自動車のガソリン代、医療費、携帯電話代―。これらを払うと残りはわずかです。

 そこへ消費税増税が追い打ちをかけます。「8%に上がってから特売品でも高く感じる。買い物、もっと減らさないとね…」

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 今夏、日本共産党熊谷市議団が全戸配布した市民アンケートに、4年前の3倍近い837人が回答を寄せました。現在の暮らし向きについて、「不安」が92%という衝撃的な結果です。

 不安の原因は「物価が上がった」が最多の61%でした。「年金が減った」(50%)、「国保税や介護保険料が増えた」(39%)と続きます。国政上の関心は、「消費税の増税」がもっとも多い62%。各地の住民アンケートでも同様の傾向です。

 消費税増税が国民生活に与えた打撃は、政府の統計にも強く表れています。

 増税直後の今年5月の家計支出(消費水準指数)は、過去30年間で最低でした。

 過去の増税と比べて消費の冷え込みが著しいうえ、その後の回復も進んでいません。(グラフ上)

アベノミクスで賃金減

 なぜ、消費が回復しないのか。

 福井県立大学の服部茂幸教授は、「消費税増税に加え、アベノミクスが消費を冷え込ませている」と指摘します。

 服部教授は、8月に刊行した著書『アベノミクスの終焉』(岩波新書)で、アベノミクスには政府・日銀が言うような効果はないと多角的に示しました。

 ―政府は異次元の金融緩和で円安にすれば、輸出が増えて景気がよくなると考えたが、輸出はそれほど伸びなかった。

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 ―円安による原材料の高騰、物価高によって国内企業や家計に損失を与えた。

 ―物価高を上回る賃金の上昇が起きず、実質賃金が減って消費が冷え込んだ。

 「アベノミクスで賃金は激減した。4月を境に景気の山は終わり、いまは谷をおりているところだ」(服部教授)

 安倍政権が輸出大企業をもうけさせることで景気を回復させようとした結果、国民の所得が奪われ、不況へと進んでいるのです。

 「新日本婦人の会」が取り組む家計簿モニター(142人)では、収入そのものの減少を訴える声が寄せられています。

 高知市のモニター、中田順子さん(78)は「減り続ける年金の範囲で暮らすには我慢、我慢」と話します。今夏、野菜の代わりに、塩漬けにしておいた野草のイタドリなどを調理して食べ続けました。

 「買い物に行かず、外出も控えていたら、息苦しくて気が変になりそうでした。まるで戦時中のようです」

 ほかにも、「消費税増税のあおりで売り上げダウン。給料が8、9月連続遅配」「冬のボーナスは2カ月遅れと通告された」などの訴えがありました。

 菅義偉官房長官は10月27日の会見で、「極めて厳しい経済環境」「国民は経済を非常に心配している」と発言。すぐに、国民の期待について述べたと修正しましたが、日本経済が深刻な状況にあることを露呈しました。

中小企業景況感“激変”

 雇用の7割を支える中小企業の景況感も、“激変”しています。

 約4万社が加盟する「中小企業家同友会」(中同協)によると、加盟企業の景況感は4月の増税を境にプラスからマイナスへと反転しました。(グラフ下)

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 増税直後の悪化は想定されていたことですが、問題はその後もマイナスが広がっていることです。夏以降の景気回復を見込んだ経営者の期待は、裏切られる結果となりました。

 平田美穂事務局長は、「消費の伸びを期待した企業もあったが、実際は違った。円安による仕入れ価格の高騰など増税前からの悪条件も重なり、回復の兆候はない」と説明します。

 安倍首相すら、中小企業の苦境について、「最近、『安倍さん、原材料やエネルギーのコストが上がって転嫁できないよ』という中小・小規模事業者の切実な声をよく耳にする」(10月23日、中小企業団体全国大会)と認めざるを得なくなっています。

 中同協の消費税影響調査(今年9月)では、来年10月の再増税について、「死活問題」との声まで寄せられています。回答した中小企業3659社のうち66%が、消費税10%の「延期・中止」を求めました。

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(写真)市民アンケートに答えた女性と対話する日本共産党の大山みちこ熊谷市議=10月30日、埼玉県熊谷市

 各紙の世論調査でも反対が「71%」(「朝日」)、「73%」(「毎日」)と圧倒的多数です。

 日本共産党の市民アンケートにかつてない反響があった埼玉県熊谷市では、党市議団と党支部が回答を寄せた住民の訪問を続けています。

 夫婦で自動車板金塗装業を営む女性(66)は大山みちこ市議に、「売り上げは10年前の6割程度。消費税が10%になったら、詰んで(行き詰まって)しまう」と訴えました。

 大きくうなずいて聞いた大山市議。負担増と景気悪化の悪循環を断ち切ることが必要だと話します。

 「消費税増税に加えて、年金削減や国保税、介護保険料の値上げで生活が立ちゆかなくなり、生活保護の相談が増えています。庶民のふところを温めるため、消費税増税を止めなければなりません」


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