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2014年10月5日(日)

主張

御嶽山噴火1週間

惨事繰り返さぬ対策に総力を

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 長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)の噴火は、火山災害としては戦後最悪の犠牲者を出す大惨事となっています。噴火から1週間、行方不明者の捜索が続き、犠牲者はさらに増える可能性があります。あまりの痛ましさに言葉を失います。今回の災害は、美しい自然に抱かれた火山がひとたび噴火すれば、きわめて深刻な被害を引き起こす現実をまざまざと示しています。日本は世界有数の火山国です。多くの地域で日常的に火山と付き合っていかなければなりません。悲劇を繰り返さないため、人命を最優先にした防災と避難の仕組みの検証と対策が急がれます。

「まさか」を避けるには

 雨のように降り注ぐ噴石、背後から迫る巨大な噴煙―。山頂付近で噴火に直面し、九死に一生を得て生還した登山者の証言や記録した映像が、火山噴火のすさまじさと恐ろしさを生々しく伝えます。

 「まさか噴火するとは」と口をそろえるように、登山者にとっては突然のできごとでした。御嶽山では9月上旬から火山性地震の増加が観測され、気象庁は長野、岐阜両県に「解説情報」を出していました。しかし、その情報は登山者にほとんど伝わりませんでした。悔やまれる問題の一つです。

 御嶽山が「日本百名山」の一つであったように、独特な美しい地形をつくる全国の活火山の多くは、登山者や観光客に人気です。火山の現在の様子や危険情報をどれだけ早く分かりやすく伝えるか、点検と改善が求められます。それが登山をする人にとっても注意と自覚を呼び覚ます一助になることは明らかです。

 なにより重要なのは、防災・避難の前提となる観測・監視体制の強化です。日本は、世界の活火山約1500のうち約7%も抱えているにもかかわらず、観測・監視体制は国際的に立ち遅れています。

 活火山110にたいして、研究者が40人程度にすぎないことはその象徴です。国が設けた検討会の提言でも、最近は火山学を専攻する学生の減少が顕著であり、このままでは将来の火山防災を担う専門家を確保できなくなる、という強い危機感まで表明しています。

 火山噴火には長期的な研究が必要なのに、短期間で結果が求められる「成果主義」優先の研究環境が背景にあります。国立大学が独立行政法人化され、毎年予算が削減されていることが事態悪化に拍車をかけていると指摘されています。

 ただでさえ火山噴火を事前に予知することは難しいといわれています。それぞれの火山には特有の歴史があり、それに熟知した専門家が不可欠です。火山噴火防災の担い手を、先細りさせることなど絶対にあってはなりません。人員・体制確保へ予算を増額するなど政府は姿勢を改めるべきです。

知恵と力を惜しまず

 もちろん予知も万全ではありません。万一の場合、噴石などから登山者の身の安全を守るための退避用施設やヘルメットなどの常備を検討することも必要です。すみやかな救援のための安否確認の仕組みをつくることも重要です。

 東日本大震災後の日本列島は、同じような大地震後に火山活動が活発化した9世紀の状況に似ているといわれるなか、火山への備えは地震対策とならんで政治の大きな責任です。人命を守るために知恵と力を惜しんではなりません。


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