2014年9月15日(月)
米国・賃金“窃盗”年間5兆円
998億円払わせるも“氷山の一角”
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【ワシントン=洞口昇幸】米国で雇用者が違法な手口で給与を差し引く「ウエージ・セフト(賃金窃盗)」が年間500億ドル(約5兆3500億円)を超えるとの試算が明らかになりました。
米「経済政策研究所」(EPI)が11日公表したもの。ニューヨークとシカゴ、ロサンゼルスの3市の低賃金労働者の3分の2が、毎週少なくとも1回は賃金窃盗の被害にあっているとしています。
報告書は賃金窃盗の手口として、▽雇用者が給与支払い用の銀行口座を故意に残高不足にし、従業員の給与小切手を現金化させない▽レストラン従業員を最低賃金以下で働かせて客からのチップも取り上げる▽英語が得意でない移民の請負労働者の報酬をピンハネする―などを紹介しています。
2012年に賃金窃盗の被害を受けた労働者が弁護士や連邦政府・州の機関に申し出て雇用者側に支払わせた額は、少なくとも9億3300万ドル(約998億3100万円)でした。報告書は賃金窃盗の総被害額からすれば、“氷山の一角”でしかないと指摘しています。
「賃金窃盗は収入不平等を悪化させ、労働者とその家族を傷つけ、公平と正義の価値に打撃を与える」などとして報告書は、実態を調査する労働省職員の増員や、賃金窃盗に対する罰則規定の強化などを政府や議会に求めています。