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2014年8月17日(日)

北海道旭川 三浦綾子記念文学館が特別展

「銃口」の時代 いま考える

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 「いまだ尾を引く『銃口』のうごめき 目を外すことなく、生きつづけるものでありたい」。作家、三浦綾子さんの文学遺産を後世に伝える三浦綾子記念文学館(北海道旭川市)では、遺作となった「銃口」の時代を今に考える特別企画展(11月3日まで)を開催中です。外国樹種見本林内にたたずむ同館を訪ね、松本道男専務理事に企画した思いを聞きました。

 (山本眞直)


写真

(写真)「時代を考える機会を提供するのは文学館の使命」と「銃口」展を語る松本道男専務理事=旭川市、三浦綾子記念文学館

 「銃口」は、1993年に著した三浦さんの「遺言」ともいわれる長編小説です。NHKがテレビドラマ化するなど話題を集めました。

 作品は、治安維持法違反容疑で多くの教師が検挙された「北海道綴方(つづりかた)連盟事件」を題材に、戦争の時代ともいわれる「昭和」を描いています。

戦争への流れ教育現場描く

 松本専務理事は話します。「昨年末の特別秘密保護法の強行、その後の集団的自衛権行使容認という流れのなかで、三浦文学の愛好家などから、国民が戦争に巻き込まれていく様子を教育の場から描いた作品『銃口』を今こそ問うべきではないかとの声があがった。歴史の転換点ともいえる今、『銃口』の作品にそって戦前と今を考えてもらえたら、と開催に踏み切りました」

 「銃口」が問いかける「綴り方」とは今の「作文」のこと。1935年(昭和10年)のころ子どもたちが「見たこと、感じたことをありのままに書くことで、物の見方や考え方を育てる」ことを基本にした教育運動でした。

 しかしこれは「天皇の命令で命まで投げ出して戦争に勝つ」という「皇民化」教育とは相いれないとして当時の文部省ににらまれ、警察の監視対象に。強まる戦争への足音と歩調をあわせるように教室から教師らが次々に「治安維持法違反」として検挙されていきました。

 主人公の教師、竜太も宿直の日、人知れずに拘引され、長期間の独房生活を強いられ教壇を追われます。

自責の念から伝えたい思い

 展示は、文学館スタッフが「銃口」から選び出した3万語の文章を土台に、竜太の(1)少年時代(2)教師時代(3)治安維持法被疑事件容疑者として拘引された時期(4)戦場から再び教壇に立つとき―の4テーマで構成されています。

 「銃口」展の全国への貸し出し・移動展も検討中です。松本氏は「銃口」展の意義を改めて力説します。

 「三浦さんの作品のなかで『銃口』はとくにメッセージ性が強い。それは軍国少女だったという自責の念があり、戦争に突入するとき、世の中がどうなっていくのか、それを若い世代に伝えたいという思いがあった。当時は治安維持法、今は秘密保護法、集団的自衛権にもとづく教育がされる、その恐ろしさを『銃口』を読んでもらい、みんなで考えてほしい。それは文学館、文学者の使命だと思う」

 来館者の書き込みノートには、こうありました。「私は戦争を知らない世代。今日の日本は『銃口』の時代と変わらない気がしてなりません。『銃口』は、自分たちに向けられているのかもしれない。若い人たちに『銃口』を読んでほしい」(旭川市内の女性)


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