2014年8月14日(木)
ベトナム戦争の帰還米兵
40年後も精神疾患苦しむ
「米国の行く末示す」と指摘も
【ワシントン=島田峰隆】ニューヨーク大学ランゴン医療センターなどが行った研究によると、ベトナム戦争から帰還した米兵のうち約1割が今も心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状に苦しんでいることが分かりました。和平協定を受けて米軍がベトナムから撤退して今年で41年ですが、専門家らは帰還兵にとって「まだ戦争は終わっていない」と指摘しています。
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ワシントン市内で8日に開かれた専門家会合で研究の暫定結果が公表されました。研究は、米退役軍人省の資金をもとにランゴン医療センターや民間会社の専門家でつくる研究チームが2010年から実施。1980年代後半にベトナム帰還兵を対象にした精神面の調査が行われており、今回はその後の追跡調査です。
11%が症状訴え
それによると、帰還兵の11%は今も悪夢、孤独感、不安感、睡眠障害などPTSDの症状を訴えています。
ヒスパニック(中南米)系と黒人の帰還兵が精神疾患にかかる割合は、白人と比べてそれぞれ3倍、2倍も高くなっています。これは有色人種の兵士らが戦闘の前線に立たされ、白人兵士よりもいっそう凄惨(せいさん)な戦争体験をしたためとみられます。
前回調査で対象となった帰還兵のうち約16%の人が亡くなっています。PTSDを患っている帰還兵は心臓病や他の慢性疾患にかかる危険が高く、PTSDでない帰還兵と比べると死亡リスクはおよそ2倍になっているといいます。
調査に関わった民間会社Abtアソシエイツのウィリアム・シュレンジャー氏は「研究は戦争の代償をよく理解させてくれる。研究から引き出すべき重要な点は、PTSDは慢性的で長期にわたる病気であり、それを患う帰還兵にとって戦争は過去のことではないということだ」と強調しました。
現役・海兵隊も
米メディアによると、イラク、アフガニスタン戦争の帰還兵が増えるなか、現役兵士の13%、海兵隊員の10%がPTSDを患っていると見積もられます。2012年には約12万人が治療を求めました。
ニューヨーク大学ランゴン医療センターのチャールズ・マルマー氏はメディアに対し「今回の研究は米国の行く末がどのようなものかを示している。根本的に手を打たなければ、かなりの数の帰還兵が生涯にわたってPTSDに苦しむことになる」と危機感を示しています。