2014年7月27日(日)
イスラム教徒の口にパン
ヒンズー至上議員 断食破り強要に批判
インド 国会中断
【ニューデリー=安川崇】インドのヒンズー至上主義政党の与党国会議員が、ラマダン(断食月)中のイスラム教徒の口に無理やりパンを押し込む場面がこのほど報道され、開会中の国会で23日、同党への批判が集中し、審議が中断する事態となりました。イスラム団体は「横暴だ」と反発。メディアからも「多宗教の共存を損なう」などの強い批判が出ています。
この議員は西部マハラシュトラ州の州政党シブ・セナのラジャン・ビチャレ氏。同党はイスラム教徒や他州からの移民労働者に対する排外的な姿勢で知られます。やはりヒンズー至上主義政党の与党インド人民党(BJP)と、国政で連立政権を組んでいます。
「事件」は17日、首都で最近オープンした同州の出先事務所で発生。報道によると、同議員は現地で出された食事の内容に不満を持ち、提供業者の責任者に詰め寄りました。
テレビ各社が繰り返し流している映像では、ロティ(インド風パン)を持った同議員が「何だこれは。手でちぎれもしない」などと発言。責任者に「自分で食べてみせろ」と迫ります。責任者は「今は断食中です」と拒みますが、同議員は右手でパンを責任者の口に押し込みました。
ラマダン中は多くのイスラム教徒が、日中の食事や水分摂取を控えます。教徒の宗教意識が高まる時期でもあり、同議員の行動は宗教的侮辱として受け止められています。
議会では国民会議派やインド共産党(マルクス主義)=CPIM=など複数の野党議員が、「インドの世俗主義に反する」と非難する連名の書簡を議長に提出。公的な調査を求めました。ビチャレ議員はのちに「報道されるまで責任者が断食中とは知らなかった」と釈明し謝罪しました。
タイムズ・オブ・インディア紙は24日、「少なくともこれは暴行だ。もし断食中と知ってやったなら、さらに悪い。個人の宗教感情を故意に傷つけることは犯罪にあたる」と批判しました。
西部ムンバイのイスラム系シンクタンクのガウハル会長は現地紙に「ヒンズー至上主義政党の政権下で、こうした出来事が今後も続かないか懸念している」と語っています。