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2014年6月30日(月)

米裁判所の債務全額返済命令

アルゼンチンが反発

途上国や国際機関 投機資本擁護を批判

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 投資会社(ファンド)が格安で買い集めた債権について30日までに額面通り支払うよう命じた米裁判所の判決(27日)に、アルゼンチン政府が強く反発しています。途上国は相次いでこれに連帯を表明。国際機関も、投機資本を擁護する判決に批判の声が上がっています。

 2001年に債務不履行(デフォルト)に陥った後、自主的な再建努力を続けてきたアルゼンチンは、債務危機以前に米ニューヨークで発行した国債の支払いをめぐって投資会社と対立を続けてきました。判決はアルゼンチンに、6月30日までに元本・利子合わせて13億3000万ドル(約1343億円)を投資会社に支払うことを命じています。

 アルゼンチンは、債務不履行の宣言後、05年と10年には、価値を7割削減した新国債との交換を提起し、すでに92・4%の債権者がこれに応じています。 支払いを命じられたのは、この債務再編に同意しない債権者から、投資会社が額面の2割ともいわれる安値で買い集めたもので、国債全体の1・6%にすぎません。アルゼンチン側の発表では、ある投資会社は、購入価格の17倍の8億3200万ドルを受け取り、ぼろもうけをすることになるといいます。

 アルゼンチンのキシロフ経済財務相は25日、米ニューヨークで開かれた途上国組織77カ国グループ(G77)会合に出席。判決を受け入れた場合、他の債権者への同等の扱いを義務付ける契約条項によって膨大な支払い義務が生じ、債務再編過程が台無しになると述べ、判決の不当性を訴えました。

 G77は6月にボリビアで開かれた首脳会議の最終文書でも、「ハゲタカ・ファンド(投機会社)が途上国債務の再編の努力をまひさせる行動を許さない」と強調しています。

 国連中南米カリブ経済委員会(ECLAC)のバルセナ事務局長は26日の声明で、この判決がアルゼンチンを困難に陥れるだけでなく、「将来的な他の国の債務再編過程にも障害をもたらす」「国際的な金融システムの安定を損なうもの」と厳しく批判しました。

 このほか、国連貿易開発会議(UNCTAD)、メルコスル(南米南部共同市場)、中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)など、さまざまな国際機関・組織が判決を批判する見解を発表しています。(菅原啓)

解説

大もうけ狙った投資会社

 アルゼンチンは1990年代、米ドルと通貨ペソの交換レートを1対1に固定したペッグ(連動)制、急激な対外開放、国営企業民営化などの新自由主義経済政策を取りました。短期資金の流入などで一時的な「繁栄」をもたらし国際通貨基金(IMF)の「優等生」と称賛されました。しかし産業の空洞化、大量失業などの国内経済の低迷につながり財政は悪化します。

 同国は2001年11月、内外資本の海外逃避によって債務不履行(デフォルト)に陥ります。国民の5割が貧困層(3割は極貧層)となり、失業率は20%に上昇しました。

 03年には新自由主義経済を批判するキルチネル政権が誕生し、「国民を飢えさせてまで債務を支払うつもりはない」(04年3月の国会演説)との姿勢で、対外債務縮小へ国際機関や先進国を含む債権者との借り換え交渉に当たりました。

 07年にはキルチネル氏の妻のクリスティーナ・フェルナンデス氏が大統領となって経済再建の仕事を引き継いでいます。

 会社倒産と違い、国家が発行した債券ではデフォルト後も額面通りの支払い義務が残ります。一部の投資会社は、これを利用して、債権の削減に同意しないアルゼンチン国債保有者から二束三文で債権を買い取り、米国で全額支払いを求める訴訟を起こすことで、ぬれ手で粟(あわ)の大もうけを狙ってきました。(伊藤寿庸)


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