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2014年6月27日(金)

イラク・クルド人「独立」へ動き急

産油都市を掌握 原油の直接販売

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 【カイロ=小泉大介】イラクが武装勢力の攻勢で危機を深める中、北部のクルド自治政府のバルザニ議長は24日、自治区の中心都市アルビルを訪問したケリー米国務長官と会談しました。ケリー氏は中央政府への協力を訴えましたが、バルザニ氏は「新しい現実、新しいイラク」を強調し、難色を示しました。同国情勢が「分裂」ぶくみとなっていることが浮き彫りとなりました。


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 バルザニ議長は23日放映の米CNNテレビとのインタビューでは、「中央政府がすべてのコントロールを失っていることは明らかだ」「クルド人が自らの未来を決定する時が来た」と強調。さらにマリキ首相についても、「権力を独占している」として辞任を求めていました。

 クルド自治政府は、今月10日に過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」が北部モスルを制圧した際、「撤退」した政府軍に代わり隣接する産油都市キルクークを掌握しました。

 これまでキルクークの油田は中央政府が管理してきました。自治政府は、独自財源確保や、クルド人にとっての同市の歴史的重要性から、同地を自治区に編入するよう主張し争ってきました。今回のクルド側の動きは、「治安の空白」に乗じた、編入の既成事実化が狙いと広く指摘されています。

 バルザニ議長はその後、クルド人民兵部隊「ペシュメルガ」の退役兵に再入隊を呼び掛け、キルクーク以外の北部各地に進出する構えを示しました。

 さらに自治政府は、5月に自治区産の原油の直接販売に乗り出しました。中央政府を介さず、トルコ経由のパイプラインを利用するものです。当然、中央政府は強く反発し、購入者には法的措置を取ると発表。このため各国は買い入れに二の足を踏んできました。

 しかしロイター通信によると、20日に、クルド産の原油を載せた初めてのタンカーがイスラエルの港に入港したことが判明。クルド自治政府当局者は「買い手がついたことは独立に向けた一つの前進」と評価しました。

 スンニ派とシーア派の争いの中で着々と自立への動きを強めるクルドですが、一気に「独立」へと向かうのか。

 イラク・バグダッド大学のアブドルジャバル・アフメド政治学部長は本紙の取材に「クルド指導部の思惑と一般住民の考えには相違もあり、そう単純ではない。イラクの分裂や統一の破壊となれば、だれも勝者などいないし、国内と周辺地域の双方に大きな影響を与えることになる」と語りました。


 クルド人自治区 イラク人口の約2割を占めるクルド人が主に住む北部3州で構成。サダム・フセイン元大統領時代には独立運動が激しく弾圧されましたが、イラク戦争後の2005年制定の憲法は、独自の政府や議会を持つなど、大幅な自治を認めています。クルド人はイラク以外にトルコ、シリア、イランなどにも居住しており、総数は約3000万人。独自の国家を持たない最大の民族とされ、各地で独立や自立を求めています。


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