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2014年5月30日(金)

2014 とくほう・特報

暴走 安倍メディア戦略問う

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 安倍政権の暴走政治を支える柱となっているのが、メディア囲い込み戦略です。安倍メディア戦略の特徴を、多角的に検証しました。


懐柔

幹部と会食深まる癒着

 安倍晋三首相は、政治的に重要な判断や会見の前後には、マスメディアとの会食やゴルフなどを繰り返してきました。(別表参照)

 テレビ局出身のジャーナリストで評論家の塙(はなわ)恭久氏は、安倍首相が1社だけでなく、一度に複数の社の幹部や記者と飲み食いするケースが多いことを指摘しつつ、次のように語ります。

 「複数の社が出席した会食で首相が何らかの情報をリークすれば、互いに“他社は書くのでは”という意識が生まれる。そうすると“特オチ”(重要な報道を自社だけが逃すこと)を恐れるあまり、言われたまま報じてしまう。そういうメディアや記者の心理をうまく突いているんだと思います」

 そんな安倍氏の戦術に利用されているメディアの側の責任はどうなのか。「首相と飯を食ったり、ゴルフをした翌日に安倍さんへの応援報道が出たら、誰がメディアを信用しますか。メディアの自殺行為ですよ」と塙氏は語ります。

 「政治とメディア、経済とメディアのあいだには緊張関係があってしかるべきです。緊張関係を保つためには、お互いに自由に批判して切磋琢磨(せっさたくま)する関係が必要ですが、いまは会食などで手なずけられています」と話すのは、「日経」の元記者で新聞ジャーナリストの阿部裕氏です。

 「社内でも、どれだけ自由な発言や議論ができるかによって、政財界への監視や報道の質は変わってきます。ところが、利潤追求のなかで、印刷や製作などの現業部門は切り離されて別会社となり、労働組合も弱体化し、記者も自由にものが言えなくなっています。そのうえ、幹部が首相との会食などで政権と癒着するのですから、なおさら報道の質は落ちるわけです」

介入

NHK狙い広報機関化

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 安倍首相のメディア戦略は、NHK人事への介入という形で表れました。昨年12月20日、NHK経営委員会(浜田健一郎委員長、12人)が、NHK会長に籾井(もみい)勝人氏(三井物産元副社長)を任命しました。

 会長を選ぶNHK経営委員会は、首相が国会の同意を得て任命します。首相は当時の松本正之NHK会長の2014年1月の任期切れを意識してか、昨年11月に自らに近い百田尚樹(作家)、長谷川三千子(埼玉大名誉教授)両氏を含む5人を経営委員に任命していました。

 両氏は12年の自民党総裁選での「安倍総裁を誕生させる会」の発起人。ともに日本国憲法を否定・攻撃する先頭に立っています。百田氏は南京大虐殺否定や東京裁判批判という特異な歴史観を表明。長谷川氏は、朝日新聞社に乗り込んで社長らを脅して自殺した右翼テロリストを賛美した人物です。

 1月25日、「慰安婦」問題など数々の暴言が飛び出した籾井会長の就任会見。出席していた記者は「いったい何が起きているのか、空気が止まったような感じ」だったといいます。

 安倍政権の肝いりで就任したNHK会長や経営委員による、その後も相次ぐ暴言問題。政権側は「個人の発言」として擁護しています。

 籾井会長就任から4カ月。消費税増税、集団的自衛権問題などでのNHK報道について「まるで政府広報機関のようだ」という声があちこちで聞かれます。同時に「籾井会長や民主主義じゅうりんの経営委員をやめさせよう」の市民団体の署名や抗議はおさまることがありません。署名数は28日時点で、4万8千を超えています。

露出

テレビ出演「人柄」演出

 安倍首相は消費税増税を前にした3月21日、フジテレビ系のバラエティー番組「笑っていいとも!」に出演し、“好感度アップ”を図りました。続いて4月8日もやはりフジ系のBSフジに生出演、「集団的自衛権容認」を宣伝しました。首相は1月にもBSフジに登場、昨年末の靖国神社参拝を合理化しました。

 安倍首相のテレビ出演は、選挙前や重要課題で政権への批判が高まったときに増える傾向があります。昨年の都議選・参院選前には日本テレビの情報バラエティー「スッキリ!」で「アベノミクス」を宣伝。秘密保護法への批判が高まった昨年12月にはTBSの情報バラエティー「ひるおび!」ほかで言い訳をしました。番組では首相への批判的見解は語られず、首相の「気さくさや人間性」をアピールする場として使われました。

 この間、首相みずからメディア幹部に電話することも多い、との指摘も。このこともあって、いま報道現場では「政権の意に反する報道をしにくい」空気が広がっているといいます。

 日本民間放送労働組合連合会(民放労連)の岩崎貞明書記次長は「テレビだけでなく、マンガの表現や雑誌の特集についても、政府や閣僚が注文を付けるケースが目立つ」と話します。「実態としては現場が、政府と違う意見や立場を表明することに慎重になってしまう。自主規制に結びつきやすい雰囲気ができています」

 民放労連は5月25日に発表した、解釈改憲による集団的自衛権行使を批判する見解の中で、メディアの役割として「(物が言いにくい)空気を打ち破って自由な言論を守り抜く社会的使命が課せられている」と表明しました。

圧力

気にくわぬ報道たたく

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(写真)内閣広報室の干渉があった月刊女性誌く『VERY』3月号「改憲の前に知憲!」

 「慎重かつ適切な報道を強く要望する」

 防衛省は2月、日本新聞協会に沖縄県の地元紙琉球新報への“指導”を求める文書を送りました。

 業界団体に加盟社の統制を求めるかのような強い文言。発端は、「陸自、石垣に2候補地」(2月23日付)という同紙の報道です。

 さらに菅義偉官房長官が「そんな時に事実とまったく違う報道がなされ、選挙(石垣市長選)に影響を及ぼしかねない」(2月28日の会見)とのべ、琉球新報と新聞協会に抗議した防衛省を援護しました。

 メディアの問題に詳しい上智大学新聞学科の田島泰彦教授は「安倍政権のメディア戦略のムチの部分だ。権力を監視するのがメディアの役割だ。権力の側は批判に耐え、情報を積極的に開示して説明責任を果たすべきだ。報道が気にくわないからと個別メディアをたたくのは理不尽だ」と批判します。

 30歳代の子育て世代向け女性誌『VERY(ヴェリィ)』3月号では、発行する前に干渉が行われました。

 同3月号では、30歳代のパパやママらが秘密保護法や自民党の改憲草案を語り合う座談会記事を特集しました。

 しかし、3月号が店頭に並ぶ1カ月近く前の1月初旬、同誌編集部に内閣広報室の男性職員が電話で「秘密保護法を取り上げるなら、うちにも取材を」と、取材の“要請”をしていたのです。

 『VERY』への電話をめぐっては、内閣広報室が書店の従業員に、事前に電話をかけさせて情報収集させたことやインターネットの情報を日常的に監視していたことも判明しました。

 田島教授は「気にくわない報道をたたく一方で、個別に働きかけて、政権の言い分を伝えてくれるメディアの取り込みを組織的におこなっているのではないか」と指摘します。

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