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2014年1月26日(日)

介護保険 安上がり事業に誘導

認定締め出す「水際作戦」

厚労省方針

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 安倍政権が狙う介護保険改悪で、介護保険サービスを利用するために必要な「要介護認定」を受けないよう誘導し、市町村による安上がりのサービスに流し込む仕組みを導入しようとしていることが25日までにわかりました。介護保険サービスが必要な人を入り口で締め出すことにつながり、介護版「水際作戦」となりかねません。


要支援・要介護者減らす

図:介護版「水際作戦」の流れ

 介護保険改悪で安倍政権は、要介護認定で「要支援」と判定された人が受ける訪問・通所介護サービスを、ボランティアなどを活用して市町村が行う安上がりの「総合事業」に移す方針です。要介護認定を省こうとしているのは、この総合事業の対象者。市町村などの窓口で、どんなサービスを使うかを申請者と相談し、総合事業だけを利用する場合は認定を省くことを可能にするというものです。

 これについて厚労省老健局の朝川知昭振興課長は昨年12月4日、全国老人福祉施設協議会の総会で講演し、「要支援者には、必ずしも専門職によるサービスを必要としない方もいる」「あえて(要介護)認定を受けなくてもいい」と発言。申請者が「窓口」に来た段階で振り分けを行い、総合事業であれば介護認定の代わりに簡易な「基本チェックリスト」で状態を確認しただけで利用させていく考えを示しました。

 認定を経ないため、呼び方も「要支援者でなくなる可能性がある」と述べ、“要支援者減らし”の狙いをあけすけに語りました。

 基本チェックリストは、介護予防事業の対象者を把握するための25項目の簡易な質問項目。訪問調査員が74項目の調査を行い、医師が意見書を書く要介護認定とは別物であり、要介護度の判定はできません。基本チェックリストだけで振り分けを進めれば、本来「要介護」に該当するはずの人まで認定から締め出され、要支援者と要介護者が減っていくことは確実です。

 厚労省老健局振興課は「結果としてはそうなる」と認め、認定を受けるかどうかは「本人の希望を尊重することを法令に明記する」と説明しています。


解説

介護版「水際作戦」

認定受ける権利の侵害

 介護保険制度は、保険料を支払い、要介護認定を経て、1割の自己負担で介護保険サービスを使う権利(保険給付の受給権)が保障される仕組みです。要介護認定を受けることは保険料を払っている人の権利です。

 市町村の窓口などで「要介護認定を受けるか、認定を受けずに市町村による総合事業サービスを使うか」という振り分けを行うことは、この根本原理を破壊するものです。

 厚労省は、これによって要介護認定を受けない人が「増えていく」と認めています。「本人の希望を尊重する」といいますが、一方では「窓口」で「総合事業のサービス利用を促していく」(朝川知昭老健局振興課長)と公言しています。事実上、認定申請権を侵害して受給権者を減らし、介護保険給付を削減する道具として働くことは明らかです。

 生活保護では窓口で申請させずに締め出す「水際作戦」が問題になってきました。今回は、介護保険サービス利用申請者を窓口で安上がりの「総合事業」に誘導し、要介護認定から締め出す新手の「水際作戦」です。

 総合事業に移される訪問・通所介護は介護保険の在宅サービスの中心であり、310万人が使っています(表)。その利用を望む人を認定から締め出して総合事業に振り分けていけば、本来なら要介護に該当したはずの人まで低水準のサービスの対象にされてしまいます。その人たちは「要支援者」「要介護者」として認識すらされなくなります。

 政府は、要介護認定は「心身の状態」を調べて介護サービス必要度の「客観的で公平な判定を行う」制度だと説明してきました。それなのに、認定を受けた人の中に「専門職によるサービスを必要としない人」がいると決めつけ、認定を省く仕組みまで導入するというのは、要介護認定の妥当性を否定するに等しい自己矛盾です。

 このような矛盾に陥るのは、要支援者へのサービスを強引に保険給付から外そうとするからです。“費用の縮減ありき”で制度をもてあそぶのはやめ、「要支援外し」は白紙撤回すべきです。(杉本恒如)

表:訪問・通所介護の利用者数

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