2013年11月24日(日)
介護保険
矛盾深める要支援はずし
訪問・通所は市町村丸投げ
厚生労働省は世論に押され、介護保険で「要支援」と認定された人への保険給付を全廃する方針を転換する事態に追い込まれました。一方で、訪問介護と通所介護については市町村事業に丸投げする方針に固執しており、矛盾を深めています。
狙い撃ち
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14日の社会保障審議会介護保険部会で厚労省は、訪問看護やリハビリ、訪問入浴介護などはこれまで通り保険給付で行うことを提案。市町村から「事業費の抑制のみに着目するのではなく、財源をしっかり確保すべきだ」などの意見が出たためだと説明しました。
しかし訪問介護と通所介護はあくまで市町村の事業に移し、あらゆる手段を使って「費用額の伸びを低減させる」としています。要支援者向け費用の約6割を占める中心的サービスを狙い撃ちするものです。
費用削減の手法として厚労省があげているのは、NPO(民間非営利団体)やボランティアの活用です。介護の専門職が担っている訪問介護や通所介護を、ボランティアなどに任せて安上がりにするというのです。
各地の自治体から「ボランティアで対応できる範囲ではない」「受け皿がない」などの声が上がっています。
既存の介護事業者を利用する場合でも、「柔軟な人員配置」などにより、「現在の訪問介護、通所介護の報酬以下の単価」にすると明示。「介護職員の処遇の低下と、事業者の撤退につながる」(連合の平川則男生活福祉局長)と批判されています。
利用者の負担割合についても、「要介護者の利用者負担割合(1割)を下回らない」こととし、引き上げだけを認める姿勢です。
自治体によってサービスに格差が生まれ、利用者はこれまでのようにサービスを使える保証がなくなり、事業者への報酬は安くなり、労働者の処遇も引き下げられる―。ふんだりけったりです。
上限設定
厚労省は、こうした事業の「効率化」を市町村に強要するために、介護保険財政から出す財源に上限額を設ける考えです。要支援者への保険給付費が年5〜6%伸びているのに対し、事業費の上限は75歳以上の人口の伸び(3〜4%)を勘案して設定するとしています。
市町村側の反発を受けて、事業費が上限を超えた場合には「個別に判断する」としました。しかし「超過は例外。上限が原則」となれば、市町村は絶えずサービスの抑制を迫られます。
さらに厚労省は新たにガイドラインを策定し、要支援者向け費用の伸びを低減させる目標と計画をすべての市町村に持たせる方針を打ち出しています。
これに対して全国町村会は、国の責任で「町村の財政状況などにより事業の実施に格差が生じないようにする」ことを求めており、削減ありきで制度の見直しを進める安倍政権の姿勢が問われます。(杉本恒如)