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2013年11月21日(木)

福島原発事故 避難住民

帰還後「個人線量が基本」

規制委方針 「空間線量」から変更

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 原子力規制委員会は20日の定例会合で、東京電力福島第1原発事故で避難している住民の帰還に向けた防護措置のあり方などについて、「基本的考え方」をほぼ了承しました。これまで専門家による検討会合が4回開かれ、11日に案がまとめられていたもの。


 「考え方」は、帰還後の被ばく線量管理について、個人線量計による測定を基本とすることなどが明記されました。個人線量計などを用いた個人線量は、ヘリコプターなどによる空間線量率から推定される被ばく線量と比べて低くなる傾向が指摘されています。

 更田(ふけた)豊志委員は「(考え方は)『不安解消』が先にきてしまっている。安心の前には必ず安全がなくてはいけない」と発言。田中俊一委員長は、「低線量被ばくに関しては安全だということを科学的に言える状況にはない。だからこそ不安がある。それにどう応えるかという視点だ」と説明しました。

 規制委は、避難解除について空間線量率から推定される年間積算線量が20ミリシーベルトを下回ることは「必須の条件にすぎず」としています。その上で国に、長期目標として個人の追加被ばくが年1ミリシーベルト以下になるよう目指すことや、住民の健康確保、放射線に対する不安に可能な限り応える対策を示すことが必要としています。

 また、専門家の意見を踏まえて、帰還せず避難を続ける住民に対しても、生活再建への取り組みなどが必要としました。

 規制委は今後、「考え方」を政府の原子力災害対策本部に示す予定です。

政府基準にお墨付き

除染費減らされる懸念も

 福島第1原発事故で避難した住民の帰還に向けた対策を検討した専門家チームの会合では、政府が帰還の要件としている、年間積算線量が「20ミリシーベルト以下」になると推定される地域の考え方についての議論はほとんど行われていません。議論の枠組みそのものが、政府の考えを前提としたものだからです。

 多くの避難住民が、政府の示したこの基準について不安を感じているといいます。しかし、今回の「基本的考え方」は、結果として政府の基準にお墨付きを与えた格好です。

 「帰還に向けた安全・安心対策」に関し、科学的・技術的な検討を行うことを目的として設置されたにもかかわらず、4回の会合の中で多くの時間が割かれたのは、各省庁の取り組みの説明です。適切な防護措置などについて、時間をかけて議論されませんでした。

 また、帰還にあたっての被ばく線量については個人の被ばく線量の評価を基本とすべきであるとしています。一人ひとりの被ばく線量の把握が重要なことは言うまでもありません。しかし、個人線量を基本にして、どのように一人ひとりの被ばく線量の低減を実現するかについては、相談員の配置などが示されていますが、多くの住民にどれだけ細やかな対応ができるのか未知数です。

 「考え方」では、個人線量計で測定される値が空間線量からの推定値より低くなる傾向があると指摘しています。しかし、数は少ないとはいえ、推定より実際の被ばく量が高くなる人も出ています。

 平均値などを用いた運用を行えば、事実上除染対策などの費用を減らす方便に用いられる危険もあります。 (松沼 環)


帰還に向けた規制委の考え方


・帰還にあたり、地域の空間線量率から推定される年間積算線量が20ミリシーベルトを下回ることが必須の条件
・帰還後の住民の被ばく線量は、空間線量率からの推定でなく、個人線量を使う
・帰還するかどうかを判断するため、地域ごとに個人線量の把握などの対策を段階に応じて示した工程表を策定する
・帰還する住民を支援する相談員を地域ごとに配置する
・相談員は自治会の代表や自治体職員、医師・保健師・看護師・保育士などが考えられる
・相談員などの活動を支援するための拠点を整備する

 個人線量計 個人が身に着け、体の外側で受けた放射線の被ばく量を計測する機器。人体への影響の大きさを表す単位シーベルトに換算して表示します。常時数値を確認できる警報付きポケット線量計(APD)が代表的。内部被ばくの測定はできません。


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