「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2013年10月27日(日)

神戸市の医療産業特区構想

企業いいなりの規制緩和

国民皆保険に風穴の危険

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 安倍内閣が「成長戦略」の売り物にする「国家戦略特区」。地域単位で行う規制緩和が何をもたらすのか。神戸市の「医療産業特区」構想を見てみると―。


写真

(写真)医療関連の施設が集中する神戸医療産業都市の中心部=神戸市中央区

 神戸港を埋め立てた人工島、ポートアイランドに250社を超す医療関連企業や研究機関が集中しています。

 大日本住友製薬、三菱電機、アクセンチュアなど大手医療・製薬メーカーなどが再生医療の研究、医療機器・医薬品開発、健康事業の開発などを行っています。市は、これらプロジェクトによる経済効果は9000億円と称しています。

17項目を要求

 兵庫県と神戸市は「細胞培養」「移植」「承認前の医療機器の臨床研修での使用」などが必要だとして、臨床研究で倫理委員会の承認などの手続きを簡略化▽自治体の判断で臨床研究の病床や外国人医師の診療を認める▽公的保険のきかない「混合診療」の拡大―など17項目の規制緩和・税制優遇措置を国に求めています。

 市の「特区」担当者は「企業側の要求をまとめたもの」と企業いいなりの姿勢をあけすけに語ります。

 安倍内閣は18日、「特区」の方針を決定。医療分野では混合診療の拡大や、外国人医師の業務解禁などを打ち出しました。

 兵庫県保険医協会副理事長の武村義人さんは「これらの規制緩和が実施されれば、医療の安全性がないがしろにされ、誰もが差別なく医療を受けられる国民皆保険制度に風穴を開けることになりかねません。医療をもうけの対象にするもので、恩恵を受けるのは一部の医療産業だけです」と指摘します。

 「市民の医療水準の向上」を口実に「特区」を推進しながら、神戸市では子どもの医療無料化は2歳まで。県下の多くの自治体が中学卒業まで無料としているのと比べても大きく遅れています。

医師会も批判

 神戸市医師会は「『規制緩和』が医療をバラ色にするといった甘言で国民を欺いてまでなぜ『特区』と称する医療の無法地帯を造り上げようとするのか」と批判する決議を採択。混合診療の全面解禁や医療の「産業化」に反対しています。

 この計画は、行き詰まった大規模な埋め立て開発を打開するため、市が震災復興の名で打ち出したものです。進出企業の固定資産税を半額にするなど、国費も含めて15年間で1500億円以上を投入。2011年には市民の反対を押し切って中央市民病院を移転させ、県立こども病院の誘致を進めてきました。

 民主党政権時代に「特区」構想が打ち出されると、規制緩和によって打開をねらう姿勢を強めています。矢田立郎市長は「成果が乏しいと見られるのは、規制緩和が進まないからだ」(12年11月『日経グローカル』)と主張。「特区」構想のなかで、ムダ遣いと批判される神戸空港の運用時間や発着枠の拡大を国に求めています。

 武村さんは言います。「市は『特区』構想を撤回し、市民の命と健康を守る医療の充実こそ目指すべきです」


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって