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2013年10月10日(木)

ノーベル物理学賞・ヒッグス粒子

宇宙の成り立ち解明へ

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 物質の最小単位である素粒子の性質や素粒子同士にはたらく力を表す「標準理論」を構成する基本粒子は17種類あります(図)。標準理論は80年代にかけて確立され、20世紀後半には予言された粒子が加速器実験で次々と見つかりました。ヒッグス粒子は“最後の1ピース”と呼ばれ、存在が実験的に確認されたのは今年です。

 光子とグルーオン以外の粒子には質量があります。最も重いトップクォークは水素原子の180倍、最も軽いニュートリノは100兆分の1以下。それぞれの粒子に違った質量を与えるのが、真空を満たす「ヒッグス場」とされてきました。

 ヒッグス場の存在を裏づけるヒッグス粒子が発見されたことは、真空がたんなる“入れ物”ではなく、粒子の性質を決める役割を果たしていることを意味しています。

 ヒッグス粒子は、宇宙の成り立ちを説明するのに不可欠な特別な存在といえます。

 ヒッグス粒子の存在が予言された1960年代、素粒子物理学は混沌(こんとん)としていました。クォークが6種類だということもわかっておらず、力を伝える粒子のふるまいと質量の関係が謎となっていました。

 ヒッグス博士の論文は、当時、南部陽一郎博士が提唱した「対称性の自発的破れ」があれば存在するはずの粒子が存在しない矛盾を解決するために書かれたものでした。それから半世紀、ヒッグス博士らの考え方をもとに、多くの科学者の手で理論と実験が発展して「質量の起源」が解明され、標準理論は完成の域に達しました。

 しかし素粒子物理学には広大な未知の領域が横たわっています。ヒッグス粒子は発見されたばかりで、性質の解明はこれから。また標準理論は、宇宙のたった4%の物質を説明するにすぎません。宇宙の4分の1を占める暗黒物質や4分の3を占める暗黒エネルギーの正体はいまだに謎です。ヒッグス粒子の質量は、標準理論の適用限界を超える新しい物理法則を予感させるものでした。今後の展開が期待されます。

 (中村秀生)


 ヒッグス粒子 素粒子に質量(重さ)を与える「ヒッグス場」に関連する粒子で、ヒッグス博士が存在を予言しました。宇宙誕生直後は、すべての粒子は質量がゼロで、「ヒッグス場」で満たされた真空の中を光速で動き回っていましたが、100億分の1秒後に宇宙の温度が1000兆度まで下がると、突然ヒッグス場の状態が偏ったために、クォークや電子、W粒子などが質量を獲得しました。ヒッグス粒子は通常、真空の中に潜んでいますが、粒子の衝突で高いエネルギーを得た真空に一瞬だけ姿を現して、すぐ別の粒子に崩壊してしまいます。

図

(写真)素粒子物理学「標準理論」を構成する基本粒子(CERNアトラス実験グループの資料を元に作成)


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