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2013年9月13日(金)

富裕層の税金は高いか

エイベックス・松浦社長の主張 検証すると…

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 音楽エンターテインメント企業のエイベックスグループの社長である松浦勝人氏が8月2日にフェイスブックに書き込んだ発言が、ネット上で話題になっています。「こんな僕でさえ富裕層といわれるならば…富裕層は日本にいなくなっても仕方ない」という書き出しで始まる発言で、松浦氏は富裕層の所得税や相続税が高すぎると主張しています。

 松浦氏が自分の税金について高いと思うかどうか、それ自体は本人の自由ですが、本当のところはどうなのか、検証してみたいと思います。

 金融庁に提出された有価証券報告書によれば、松浦氏の社長としての昨年度の報酬は4億5100万円。これは同社の正社員の給与の56倍です。このほか、保有する同社の株式340万株に対して1株当たり55円、総額1億8700万円あまりの配当があり、配当を合わせた年収は6億3800万円です。また、松浦氏の保有する同社株式の時価総額は92億円にのぼります(8月16日現在)。

配当の税率10%

 松浦氏は、自分が「富裕層」と呼ばれるのがお気に召さないようですが、この金額からみれば「富裕層」に当たることは否定しようがないでしょう。

 松浦氏は、税率50%が「我慢の限界」と言っています。確かに、現行の所得税・住民税の最高税率は50%ですが、それは役員報酬の部分だけです。配当については、証券優遇税制で10%という低い税率となっています。実は、松浦氏は同社の発行株式総数の7・4%を保有しており、保有比率3%以上の大口株主であるため、本来なら証券優遇税制は受けられません。ところが、保有株式の多くを資産管理会社に移し替えているため、本人名義の株式は2・94%となり、証券優遇税制が適用されているのです。

 株式配当を含めた松浦氏の年収全体に対する税負担率は、50%にはとても達しません。社会保険料を含めても、せいぜい35%前後というところでしょう。社会保険料も含めれば、一般のサラリーマンでも2割台、企業役員クラスなら3割台の負担率は珍しくありません。松浦氏の負担率は、他の人に比べてそれほど高いとは言えないでしょう。

恩恵チャッカリ

 それだけではありません。松浦氏が金融庁に提出した大量保有報告書によれば、同氏は、今年5月13日に個人名義の株式のほとんどに当たる134万7800株を同日の終値3010円で売却し、翌14日に同額で買い戻すということをしています。これは「クロス売買」と言われる手法で、保有株数を維持したまま、含み益を顕在化させるものです。同氏の取得原価は1株60円程度でしたから、3010円で売却すれば1株当たり2950円、総額40億円近い譲渡所得が生じます。今年中なら証券優遇税制によって税率10%で税金は4億円ですが、来年以降は8億円になります。いまのうちに「クロス売買」をすることで4億円の「節税」になるというわけです。

 欧米主要国では、松浦氏のような大株主の配当や譲渡所得の税率は30〜40%です。10%などという低税率が適用されている日本は、異常な「株主天国」です。松浦氏は「この国は富裕層に良いことは何もない」と発言していますが、「株主天国」の恩恵をチャッカリと受けておきながら、「良いことは何もない」などと言うのは、聞いてあきれます。

 (垣内亮 日本共産党政策委員会)


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