2013年9月11日(水)
シリア避難民の思い
「外国軍介入100%反対」
平和的解決に力を尽くして
ザアタリ難民キャンプ(ヨルダン北部)
シリアは現在、内戦の恐怖から祖国を逃れる避難民が国連発表で人口の約1割にあたる200万人を超えるという危機的状況に至っています。彼らは外国の介入をどう考えているのか、隣国ヨルダンのシリア国境近くに位置する難民キャンプを訪ねました。
(ザアタリ〈ヨルダン北部〉=小泉大介 写真も)
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ヨルダンの首都アンマンから北に車で約1時間半行くと、砂の荒野にこつ然と巨大な“街”が現れました。ザアタリ難民キャンプです。
政権許さぬが
「政府軍に息子を殺された私はアサド政権を絶対に許しません。しかし、政権のあらゆる罪にもかかわらず、私は外国軍の介入に100%反対します。それはさらなる殺人と破壊をもたらすだけだからです」
シリアの首都ダマスカス郊外から今年1月に家族12人で逃れてきた男性、イブラヒム・ムスリマニさん(51)は言いました。長男を銃撃で失ったことに加え、自身も「反アサド大統領」的言動を理由に治安当局から弾圧され、祖国を離れざるを得なくなりました。
ダマスカスでは貿易商として経済的に不自由のない生活を送っていましたが、難民キャンプでは援助物資に頼りながらコーヒーを売ってわずかな日銭を稼ぐ生活に一変してしまいました。
悲惨な結果に
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「シリア人は自尊心が強く、外国の干渉や支配を受け入れません。過激派もさまざまなグループが存在しており、軍事攻撃を始めてしまえばイラク戦争以上の悲惨な結果をもたらしかねません。国際社会にはなんとか事態を平和的に解決するために力を尽くしてほしい」
訴えるように語るムスリマニさん。故郷での思い出に話がおよぶと、目から大粒の涙がこぼれ落ちました。
「シリアの将来 私たちが」
独裁も介入も拒否する避難民
ヨルダン政府とともにザアタリ難民キャンプを管理する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の広報担当者は、「ここが開設されたのは昨年7月末でした。当時数百人だったシリア難民はみるみる急増し、現在は12万人以上と、世界で2番目に大きな難民キャンプ(最大はケニアのソマリア人難民キャンプ)となってしまいました。しかも半数以上は18歳未満の子どもで、人道的危機としかいいようがありません」と説明します。
UNHCRのグテレス高等弁務官はシリア内戦の政治的解決の必要性を訴えていますが、ザアタリの避難民自身は軍事介入についてどう考えているのでしょう。
夫亡くしたが
同難民キャンプでは、2011年3月に反アサド政権デモの「発祥の地」となったシリア南部ダラーからの避難民が多数を占めるため、外国の軍事介入を「支持」「歓迎」している人々がいるのは事実です。しかし一方で、同地出身者からも介入反対の声が次々と聞かれました。
避難民自身が営むキャンプ内の“商店街”で買い物をしていた女性、サマル・ハリリさん(45)。教師だったハリリさんはいま、ザアタリで難民の子どもたちの先生役を務めています。
「私は政府軍の砲撃で夫を亡くしここに逃れてきましたが、それでも外国軍の介入には反対です。教師として子どもたちに、イラク戦争の結果、人々がいまだにどんなに苦しんでいるのかを折にふれて教えてきた私が、どうしてシリアへの攻撃を認めることができるでしょう」
商店街で目に入ったある菓子屋には、反政権派武装組織「自由シリア軍」の旗が掲げられていました。軍事介入を支持しているのかと思いつつ店に入ってみましたが、それはまったくの誤解でした。
男性店主のアンマル・アリさん(32)は「アサド独裁政権にはもちろん反対ですが、外国軍の介入にも反対です。イラクで失敗した米軍がどうしてシリアでは状況をコントロールできると断言できるのか。介入の口実もイラク戦争の時とほとんど同じだからなおさらです。シリアの将来は私たちシリア国民自身が決めるのです」ときっぱり語りました。
家庭築きたい
テントの周りで遊ぶ子どもたちを見守っていた女性、アマニー・ムーサさん(27)の言葉も印象的でした。
「ここに避難して8カ月がたち、最近、キャンプで知り合った男性と結婚しました。私も早く子どもをつくって、故郷で幸せな家庭を築きたい。このささやかな夢が外国によって壊されるようなことは、絶対にあってはなりません」