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2013年8月19日(月)

保育合研

安倍政権の問題点浮き彫り

よりよい保育を

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 猛暑のなか神奈川県内で開かれた第45回全国保育団体合同研究集会(10日〜12日)で、よりよい保育を実現するために保育者、保護者、研究者らが熱心に語り合いました。保育制度講座では、安倍政権が具体化を進める「子ども・子育て支援新制度」(新システム)や「待機児童解消プラン」の問題点が浮き彫りになりました。(鎌塚由美、下渕雅史)


株式会社立で待機児解消言うが…

隣に産廃施設/鉄道高架下

写真

(写真)産業廃棄物処理施設に隣接する株式会社立保育園(左の建物)=17日、川崎市内

 合同研究集会では政府の「待機児童解消加速化プラン」による公的責任の放棄や、安倍政権が手本にする「横浜方式」の危険な姿と問題点が明らかになりました。

 シンポジウム(11日)でジャーナリストの猪熊弘子さんは、株式会社立保育園の実態を報告しました。川崎市が認可した同園は、産業廃棄物処理施設が隣接。猪熊さんは現場の写真を示しながら「園には庭がないので、屋上で子どもが遊びます。その屋上に産廃施設のフェンスを越えてほこりがくる。施設の騒音、低周波がずっと続いている状態です」と紹介しました。産廃施設も保育園も市が認可しているため違法ではありません。

 横浜市内にある鉄道高架下の保育園や元オフィスビルの保育園の実態を日本共産党横浜市議団の荒木由美子議員が報告しました。高架下にある保育園は線路を支える支柱が大きく張り出しており、室内の死角がそこかしこにできています。

質を支える保育士の待遇

人件費率の異様な低さ

図:株式会社立保育所の利益確保の構図

 安倍政権は待機児童解消対策の決め手として、企業参入を促しています。保育園を経営する会社自体は、その運営費を保育以外に使うことはできない中、企業は保育になぜ狙いをつけるのか。

 猪熊さんは、現行制度の下でも、親会社が管理する同系列の子会社が、給食や講師派遣、物品販売などを保育園に行い、利益を生み出していることを指摘しました。(図参照

 荒木議員は株式会社立の運営費に占める人件費率の異様な低さが党市議団の調査で明らかになったと報告しました。それによると、株式会社の人件費率が社会福祉法人の7割にとどまっていることや、ある保育所の収支報告では、保育の質で重要な研修費が年間2万3100円と平均の1割程度の一方、広報費が82万円も使われていました。

 保育士の待遇は保育の質を支える大きな力です。利益優先のためそれを切り縮める企業の論理が浮かびあがりました。

 株式会社参入に対して猪熊さんは「税金の流れを明らかにする規則をつくらなければいけない」と指摘しました。

「新システム」の基本指針

公的責任を形骸化

写真

(写真)合研で保育制度についての講座を聞く参加者=11日、神奈川県相模原市

 「新システム」では、自治体が公的保育に責任をもつ原則(児童福祉法24条1項)は残されましたが、安倍政権は公的責任を無視し、市場化を追求する姿勢を強めています。これに対し、講座「子ども・子育て支援新制度の概要と問題点」のなかで、「新システム」の具体化を議論する「子ども・子育て会議」が了承した基本指針(7月末)の問題点が示されました。

 基本指針は、保育所整備のあり方などを国が自治体に示すもの。これまで田村憲久厚生労働相は「基本的に認可保育所を中心に整備する」(4月)と述べていました。

 ところが基本指針の了承を受けてから政府は地方自治体向けの説明会(6日)で、認定こども園への移行が「最良」と誘導しています。保育所が認定こども園に移行すれば、直接契約、個人給付の仕組みとなり、市町村が責任を負う公的保育の枠から外れます。増え続ける保育需要に対して、公費をなるべく支出しないで対応する仕組みです。民自公の「3党合意」(昨年6月)による修正(幼稚園・保育所の認定こども園への移行を義務付けないことを確認)や、田村厚労相の国会答弁にも反します。

 講座のなかで全国保育団体連絡会の実方伸子事務局長は、「児童福祉法24条1項は徹底的に無視し、公的責任の形骸化を図ろうとしている」「市町村の公的責任を果たさせながら、子育て施策を充実させていくことこそ求められる」と強調しました。


“地方版子ども・子育て会議”

地方での役割を交流

 “地方版子ども・子育て会議”へのかかわり方も合同研究集会のテーマとなり、多くの参加者が熱心に耳を傾けました。

 地方版「会議」は、「新システム」で設置される自治体レベルの合議体で、地域住民も委員として参加します。

 シンポジウムでは、保育運動の関係者が委員になれない場合でも「定期的に公聴会を開くことなど要望する必要がある」(佛教大学の杉山隆一さん)、「地域の要求を反映させた条例案を提案することもできる」(京都華頂大学の藤井伸生さん)との提起がありました。

 この提起が好評。「地元の『会議』の委員になれず、がっかりしていたが、これからの運動の方向性が見えた」(さいたま市の男性)との感想が参加者から聞かれました。


 子ども・子育て新システム 自民、公明、民主の3党よって成立した「子ども・子育て新制度」。保育の自治体責任を後退させ、企業参入を促進させる法律です。保育所整備のための補助金も廃止されます。


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