2013年7月21日(日)
小麦急騰に輸出中止で対応
アルゼンチン政府
野党は過度の介入を批判
世界屈指の小麦輸出国アルゼンチンのフェルナンデス政権は今月初め小麦の輸出中止を決定しました。国内に流通する小麦が不足しパンなどの価格が急騰していることへの対策です。同国では10月に国会議員選挙が予定されており、政府による過度の市場介入が事態の根本要因だと批判する声も上がっています。
ロイター通信などによると、アルゼンチンでは天候不良の影響で、昨年の小麦生産が減少。さらに、今年前半は、干ばつで北部4州の作付面積が昨年比6割減の22万ヘクタールにとどまりました。
こうしたもとで、1月に1トン当たり219ドルだった国内消費向けの小麦価格が406ドルへと2倍近くに急騰。パンの小売価格も1年間で約5割上昇し、国民生活を圧迫しています。
政府は今月5日から小麦の輸出を中止。輸出向けに業者が備蓄していた小麦の一部が国内市場に出回り始めたといわれています。パンの価格は1キロ当たり18ペソ(約330円)となっていましたが、政府はパン製造業者やスーパー経営者らに、10ペソに抑えることを要請。最終的には、午前10時までに販売するパンについて10ペソとすることで合意に達しています。
野党勢力は、そもそも昨年から今年にかけての需給見通しを誤り、昨年産の小麦の輸出許可を出しすぎてきた政府の失政を厳しく批判しています。
フェルナンデス政権は、小麦の輸出量をコントロールするため、輸出税や数量制限などの措置をとってきました。ブエノスアイレス大学のマルティン・ラペッティ教授はスペイン紙パイスに対して、こうしたやり方を嫌う生産者が小麦から大豆など他の穀物の生産にシフトしていることも、小麦生産量の低下を招いていると述べています。
同教授は、市場の法則に従属しないとするフェルナンデス政権の意図は「魅力的だ」ともいいます。同時に、インフレ対策としていずれは通貨切り下げが必要になるとの見通しを明らかにし、「この政府は最も不利な立場にある人々の味方をするという。しかし、その政策は短期的だ。中期的には(通貨切り下げで)味方すべき人々に損害を与えることになるだろう」と指摘しています。
(菅原啓)