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2013年6月24日(月)

米兵凶悪犯野放し

「運用改善」の1996年以降 半数の62人、逮捕せず

元凶は日米地位協定

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笠井議員への警察庁資料

写真

(写真)日本人従業員への性的暴行が明らかになった米陸軍キャンプ座間(神奈川県座間市、相模原市)

 1996〜2012年に米兵・軍属が日本国内で犯した凶悪犯罪(殺人、強姦=ごうかん=、強盗、放火)の容疑者129人のうち、半数に及ぶ62人を警察が身柄拘束(逮捕)しないまま事件処理をしていたことが、警察庁が日本共産党の笠井亮衆院議員に提出した資料から分かりました。強姦では、容疑者41人の約2割にあたる9人しか逮捕していません。

 刑法犯罪者の身柄措置に関する警察庁の全国統計(11年度)によれば、凶悪犯罪の容疑者の9割以上は逮捕されています(グラフ)。米軍の犯罪が野放しにされている植民地的な実態は深刻です。

逮捕・起訴拒む密約

 逮捕率の低さの背景にあるのは、在日米軍の特権を定めた日米地位協定です。協定17条5項Cでは、容疑者が犯行後に基地に逃げ込むなどで米側が先に身柄を確保した場合、日本側が起訴するまで米側が引き続き拘禁するとしています。

 1995年9月に沖縄県で発生した米兵3人による女子小学生暴行事件で、米軍は容疑者を基地内で逮捕。日本側が身柄引き渡しを求めたところ、米側が協定を盾に拒否したため、県民の怒りが爆発しました。

 このため、日米両政府は同年10月、殺人・強姦(ごうかん)に限って、日本側が容疑者の身柄引き渡しを要請した場合は、米側が「好意的考慮を払う」という「運用改善」をすることで合意しました。

 しかし、2002年12月に女性暴行未遂の容疑で沖縄県警は米軍少佐の逮捕状を取りましたが、米側は身柄引き渡しを拒否しています。「運用改善」の限界が示されました。

 加えて、「運用改善」された96年以降も米兵・軍属による殺人8件、強姦35件が検挙されているにもかかわらず、日本側が起訴前の引き渡しを求めたのは6件にとどまっているという問題があります。

 例えば、12年7月に神奈川県綾瀬市で起きた女性暴行事件では、神奈川県警は「捜査上支障ない」として引き渡しを求めず、基地内の容疑者から任意聴取を行うにとどまりました。

■  □

 その背景にあるのは日米間の密約。地位協定の前身である日米行政協定(1952年発効)では、米軍関係者によるいかなる犯罪も米側に裁判権がありました。ただ、「あまりにも植民地的」との反発が起こったため、日米両政府は53年9月、「公務中」の犯罪は米側に、「公務外」では日本側に第1次裁判権があると改定しました。

 しかし裏では、日本側代表の津田実・法務省警備局総務課長は「著しく重要な事件以外について、第1次裁判権を行使しない」と、刑事裁判権の放棄を米側と合意(53年10月28日の議事録)。その結果、近年でも米軍関係者による犯罪の約8割(2001〜08年)が不起訴となっています。

 さらに津田課長は、「日本国の当局がその犯人の身柄を拘束する場合は多くない」(同月22日の議事録=別掲)ことも約束したのです。

■  □

 逮捕もせず、起訴もしない―。笠井議員が入手した警察庁資料は、60年前の両密約がいまも有効であることを裏づけるものです。

 日本側がすぐに逮捕しなければ、米軍側に証拠隠滅の余地を与え、本国へ逃亡される可能性もあります。日本側の証拠が不十分であれば、起訴にも結びつかなくなるという悪循環が発生します。凶悪犯が逮捕もされず、裁きも受けない実態を前に、多くの被害者が苦しみと屈辱を深くしてきました。

 沖縄では、昨年10月の女性暴行事件で改めて地位協定への怒りが高まっています。しかし、安倍内閣は「前政権で運用改善がなされている」(岸田文雄外相、昨年12月の就任時会見)と、協定改定を求める姿勢はありません。米軍占領期と変わらない異常な主権放棄と、後を絶たない被害者への人権侵害に見て見ぬふりを続ける政府の実態は、「完全な主権回復」とほど遠いといわざるをえません。(池田晋)


 地位協定に詳しい新垣勉弁護士の話 米兵・軍属の凶悪犯容疑者が逮捕されないというのは、それだけ警察の証拠を集める力が弱くなるということです。証拠が隠滅されるおそれもあります。否認することが多い米兵の身柄が拘束できなければ、捜査は難航し、起訴も難しくなります。

 引き渡しを求めた場合も米側がすぐ応じるわけではなく、判明した実態からも「運用改善」が国民の批判をそらすための小手先の取り繕いだったことは明らかです。密約に象徴される日米同盟優先の政府の姿勢が問われています。

図:米兵・軍属と国内凶悪犯の逮捕実績
図

行政協定裁判権小委員会刑事部会の1953年10月22日付議事録。下線部には、日本側代表の発言として「日本国の当局がその犯人の身柄を拘束する場合は多くはないであろうと述べたい」と記されている


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