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2013年6月20日(木)

原発活用進める政権にお墨付き

「新基準」決定

日程が最優先 / 運転最長60年 / 免震重要棟なしでも“太鼓判”

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 原子力規制委員会が原発の「新基準」を決定しました。東京電力福島第1原発事故の原因究明も終わっていない段階で作られた「新基準」。規制委の田中俊一委員長は「世界でも一番厳しい規制基準」を目指したと語っていますが、福島原発の教訓を踏まえた対策とはなりえず、国民の安全を置き去りに、再稼働へ前のめりの安倍政権の意向に沿ったものです。 「原発」取材班


写真

(写真)関西電力大飯原発3?4号機の新基準適合状況を確認するために現地調査した規制委のメンバーら=15日、福井県おおい町

 「新基準」作りは「スケジュール先にありき」でした。

 2012年6月、自民、公明、民主が賛成した原子力規制委員会設置法で、今年7月18日が「新基準」の施行期限となっていたからです。そのため、「5年かけてもおかしくない」(規制委の更田豊志委員)とされる基準作りは、議論を尽くすどころか期限に間に合わせる議論に終始しました。

 一方、再稼働を急ぐ電力会社は審議過程の聞き取りで「工事が大規模になる」「基準が厳し過ぎる」などと対策を“値切る”姿勢を露骨に示しました。

 さらに、時間のかかる対策などは軒並み先送りされています。たとえば、政府事故調などが問題にしている、原子炉を監視する水位計。福島原発事故では水位計が機能せず、初動対応に影響しました。規制委は、この規制基準作りの検討は7月以降にするといい、福島原発事故の教訓すら後回しです。

 福島第1原発で深刻な問題になっている放射能汚染水対策も問題にもされませんでした。基準案に対する意見公募でも「汚染水対策を義務づけるべきだ」と意見が寄せられても、規制委は意見公募の回答で「中長期的にはさまざまな状況が考えられます。柔軟な対応を行うことが重要」とするだけで、現実に起きていることに目をつぶっています。

「安全神話」のまま

 「新基準」では、重大事故(過酷事故)対策を初めて義務づけました。しかし、福島第1原発事故ではいまだに、格納容器のどこが壊れたのかさえわかっていません。

 福島第1原発事故のような炉心溶融(メルトダウン)が起きても、格納容器が壊れ大量の放射性物質が放出されるのを防止するため、フィルター付きベント(排気)装置の設置など追加的な措置を求めています。追加的措置で壊れないなどというのは、旧態依然たる「安全神話」です。

 また「新基準」は、事故が起きたら、移動式の電源車やポンプを複数配備するという対症療法的な対応を求めています。ところが、規制委の審議で、事故の進み方が早い場合、移動式は「絶対に間に合わない」と指摘されたものです。しかも、地震や津波に襲われ、がれきが散乱した原発敷地内で対応できるかどうか検証されていません。

活断層認定は後退

 地震対策も問題です。おととしの東日本大震災は、震源域の連動など、これまでの地震学の知見を覆すものでした。しかし、原発の設計の前提となる地震動(地震の揺れ)の想定や耐震設計などの指針類には20年以上前のものが使われています。

 「新基準」には、活断層の認定に当たって、「後期更新世(12万〜13万年前)以降の活動が否定できないもの」と従来の定義を踏襲。政府の地震調査研究推進本部が、活断層を「約40万年前程度を目安」としており、当初はそうした内容が示されていたのに、最終的に明確に否定できない場合に限って約40万年前以降の古い地層まで調べることに後退しました。

検査間隔の延長も

 今回、原発の運転期間を「40年」と定める制度が導入され、1回の認可でさらに20年まで運転延長を認めます。老朽化した原発の危険性はかねて指摘されています。その上、認可に必要な工事が完了しなくても、工事計画だけで延長を認めるようにしました。

 さらに、13カ月に一度義務づけられた原発の定期検査について、2009年に改悪されたものが継承され、13カ月だけでなく、18カ月や24カ月に間隔を延長できるとしています。

 原発の延命、定期検査時期の長期化はいずれも、できるだけ原発を使い続けたい電力会社の要求や、安倍政権の「原発の活用」に沿うものです。

基準満たさずとも

 「新基準」の審査もどう進められるのか―。規制委は当初「例外扱いはしない」といっていた関西電力大飯原発3、4号機について、運転を続けながら、新基準との適合状況を書類などで確認する作業を進めています。

 移動式のポンプを使った訓練などの現場を視察し、更田委員でさえ「(訓練に当たった今回の人たちは)1軍ばかり」と言うほど熟練者だけで行った現実味のないものでした。

 「新基準」は、事故時の対応拠点として免震機能を備えた施設を求めていますが、大飯原発には免震重要棟(2015年末完成)がなく、基準を満たしていません。関電は仮の拠点として、停止中の1、2号機の中央制御室横の会議室(105平方メートル)を選び、発電所長以下38人の要員を滞在させるとしました。

 狭い会議室を使うことに疑問を呈してきた更田委員は現地を見て一転、「決定的に足りないという印象は持たなかった」と述べました。

 新基準では敷地の地下構造を3次元的に明らかにするよう求めていますが、関電は行っていません。

 「新基準」の施行後ただちに再稼働を申請すると公言している原発にも、新基準を満たしていないものがいくつもあります。

 大飯原発3、4号機に規制委が「太鼓判」を押すのであれば、どの原発に対しても再稼働を認めることにならざるを得ません。


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