2013年5月25日(土)
全柔連理事 辞任へ
元選手へわいせつ行為認める
自浄能力のなさ露呈
いったいこの組織はどうなっているのか。
柔道界でまた不祥事が発覚しました。今度は全柔連の現職の理事によるわいせつ行為です。
事件が起きたのは、2011年12月、この理事は、30代の元女子選手にたいし、大会の打ち上げの後、地下鉄のエレベーターで無理やり抱きつき、キスなどの行為を迫りました。彼女は、女子トイレに逃げ込み、助けを求めたといいます。まさに犯罪行為そのものです。
その後、被害を受けた女性は別の理事に、この件を相談しました。しかし、取り合ってもらえなかったといいます。
この事件から見えてくるのは、指導的な立場の人物のあまりに節度を欠いた姿と、組織の自浄能力のなさです。
今回の一件が起きたのは、アテネ、北京五輪の金メダリストの内柴正人被告が、準強姦(ごうかん)容疑で逮捕された時期です。今年に入って、全日本女子監督による選手への暴力やパワーハラスメントが明るみに出ました。そこで組織のあり方も問題にされながら、理事本人はこの件について、だんまりを決め込み、相談された理事も問題にすることはありませんでした。
事件を起こした理事は1カ月ほど前、「やって(訴えて)も無理だよ」と、元女子選手に話したとされます。
理事本人は辞任の意向といわれます。しかし、今回も告発があって初めて事態が動きました。組織みずから、不正を正すという自浄能力が発揮されなかったばかりか、覆い隠そうとする体質がふたたび見え隠れします。さらに、女性への暴力、パワハラ、セクハラがこれだけ相次ぐことにも、この組織の前近代的なゆがんだありよう、異常さがあります。
スポーツ団体は本来、高い倫理観や規範、フェアな意識を社会に示し、広げることに、その役割があります。全柔連はいま、その使命を投げ捨てているに等しい。
代理人の弁護士によれば、元女子選手は「泣き寝入りはしたくない。柔道界の体質を変えたい、と告発に踏み切った」といいます。
柔道界は彼女に加え、監督のパワハラを訴え出た15人の女性の勇気、不正や暴力を憎むまっすぐな思いがあります。それを支え、組織を変えようという民主的なエネルギーもあります。それらの力を集め、改革へ踏み出すときです。 (和泉民郎)