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2013年3月28日(木)

アベノミクス 待ちうける 社会保障改悪 消費税増税

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 安倍首相の経済政策「アベノミクス」の危険性は「三本の矢」にとどまりません。社会保障の切り捨てと消費税の大増税が待ち受けています。(清水渡、柳沢哲哉)


「バブル経済」の恐れ 物価上昇で生活苦境に

 「アベノミクス」の第1の矢は「大胆な金融緩和」です。政府と日本銀行は、物価上昇率2%を目標とする共同声明を発表。市中に出回るお金を増やすために、日銀がさらに大量の国債を購入し、価格変動の激しい金融商品の購入を増やすなど、これまで日銀自身が避けてきた“禁じ手”に踏み込みます。

 実体経済がよくならないまま、株価や不動産価格だけが上昇する「バブル経済」の恐れがあります。賃金が上がらないで、物価だけが上昇すれば、国民生活は苦境に立たされます。

 第2の矢の「機動的な財政運営」とは、公共事業を増やすこと。政府は2013年度予算案で公共事業関係費を12年度比15・6%増の5兆2853億円を計上しました。この中には、八ツ場(やんば)ダムの事業費や国際コンテナ戦略港湾の機能強化など、不要不急の大型事業が盛り込まれています。

 問題は、消費税増税が前提ということ。消費税増税法の付則18条2項には、「(消費税増税で)財政による機動的対応が可能となる」「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」とあります。

 大型公共事業の推進で悪化した財政のしわ寄せは、社会保障に向けられます。その第一歩として、13年度予算案に生活保護費削減が盛り込まれました。政府の第5回経済財政諮問会議では、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長や佐々木則夫東芝社長など民間議員が、「歳出の効率化については、社会保障部門が本丸である」との文書を提出しました。

 消費税の10%への大増税と社会保障の大改悪を強行すれば、いまの一時的な景気浮揚もふきとばす打撃を暮らしと経済に与えることになります。

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貧困の連鎖、格差拡大 低賃金・解雇の自由化も

 「好況」演出のもと、富裕層が購買力を旺盛にしています。2月の百貨店売り上げは2カ月連続で前年同月比増。美術品や貴金属は6カ月連続で売り上げを伸ばしました。

 一方で、スーパーは12カ月連続で前年同月比減。さらに、急激に進行した円安が庶民生活を苦しめます。

 ガソリンや灯油の価格は2月末まで連続で上昇。家庭の水光熱費は7カ月連続で前年同月を上回りました。

 「アベノミクス」の第3の矢である「投資を促進する成長戦略」とは、「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指すこと。安倍晋三首相の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加表明をうけて、菅義偉官房長官は16日、「日本経済を押し上げることのできる3本目の矢が高く打ち出された」と述べました。

 TPPは、関税とさまざまな経済的規制を「包括的、高い水準」で撤廃し、一体化したルールにしようというもの。コメ生産をはじめとする日本農業は壊滅的打撃を受けます。国内農業への影響を極めて限定的にとらえた政府の試算でさえ、現在39%の自給率は27%に落ち込みます。

 企業による「国際競争力」強化を口実としたコスト削減で、労働条件がさらに悪化する可能性も。現状でも、年収200万円に満たない労働者は6年連続で1000万人を超えています。政府の産業競争力会議や規制改革会議では、いっそうの労働者派遣法の緩和や解雇規制の緩和を検討。みずほ総合研究所の杉浦哲郎副理事長は、「安倍政権の経済政策によって生まれる雇用」は「その中心が低賃金雇用である可能性が高い」と指摘します。

 「アベノミクス」は貧困の連鎖と格差の拡大をもたらします。

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賃上げで消費回復を 不況の原因は所得の減少

 長引く不況は国民の所得が減少し、消費が落ち込んでいるからです。ここを転換する必要があります。政府の公務員賃金削減策は足を引っ張るだけです。

 07年から09年までの3年間で最低賃金を41%引き上げた米国では、経営者たちが「低賃金労働者は、自ら生活し働く地元でお金を使うから、(最賃の引き上げは)ビジネスにとっても地域社会にとっても利益となる」と賃上げを支持。米国の消費者物価指数は3年連続のプラスです。

 日銀の佐藤健裕審議委員は2月の群馬県金融経済懇談会で、「物価安定の目標である2%の消費者物価上昇率を目指すには、とにもかくにも賃金の回復が重要である」と強調しました。

 政府がやるべきは、消費税増税を中止し、国民のふところをあたためる政策を実行することです。

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アベノミクス“司令塔” 財界・大企業が主導

経済財政諮問会議 日本経済再生本部

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」を推進する司令塔となるのが、経済財政諮問会議と日本経済再生本部です。経済財政諮問会議は、中長期の経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」を策定します。政策の具体化を担う日本経済再生本部の下には産業競争力会議が設置されています。

 これらの会議には、経済同友会代表幹事の長谷川閑史(やすちか)武田薬品工業社長や佐々木則夫東芝社長ら大企業経営者が民間議員として多数参加。環太平洋連携協定(TPP)参加、原発の再稼働、労働法制の規制緩和、法人税の引き下げなど財界・大企業の身勝手な要求を繰り返し、政策作りに影響を与えています。

 「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指す安倍首相はこうした要求に応え、「2030年代原発稼働ゼロ」方針の見直し、TPP交渉参加を表明しました。

 「アベノミクス」の実質的な推進者は財界・大企業です。二つの司令塔は財界・大企業主導の「構造改革」を推進する舞台となっています。


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