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2013年3月21日(木)

マツダ「派遣切り」勝利判決

一日も早く工場に戻りたい

「控訴やめよ」宣伝

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 マツダの「派遣切り」で正社員としての地位を認めた山口地裁の勝利判決(13日)を受け、ユニオン山口の原告らが工場前で、控訴するなと宣伝しました。提訴から4年。たたかいはマツダの城下町の世論を変え、不当判決が続く司法の流れも変えました。 (酒井慎太郎)


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(写真)マツダの防府工場前で控訴するなと宣伝する支援者ら=19日、山口県防府市

 19日早朝、山口県防府(ほうふ)市のマツダの防府工場前。2008年秋以降、ここで約800人が雇い止めされました。

 「私たちを一日も早く、この工場に戻してほしい」。原告の佐藤次徳さん(47)がハンドマイクで訴えました。これまで「工場には知り合いがいるから」と、この門前での演説だけは避けていた佐藤さん。判決に後押しされました。

 正社員への登用を信じて5年半、一生懸命に働いた職場です。「今でも作業内容はよく覚えています。みなさんのお力添えをお願いします」と呼びかけました。

地元紙トップで

 09年4月の提訴から弁論は19回。直後に欠かさず工場前で宣伝し、報告してきました。

 当初、ビラを受け取る社員はほとんどいませんでした。会社側が宣伝の1メートル先で社員の手から回収していたからです。しかし、3年目になると「取るなと言われている」と社員が教えてくれました。

 原告15人のうち13人が正社員と認定される画期的な判決。地元紙・中国新聞は1面トップで報じました。関心の高さもあり、従来の倍のビラが受け取られました。

 JR防府駅前では毎週の宣伝を続け、判決までに115回。公正判決を求める署名数は回を追って増え、1時間で約200人分を集めたときもありました。

勇気をもらった

 判決に勇気をもらったという女性(33)は19日、日本海側にある長門市の自宅を午前5時に出て、瀬戸内海を望む工場前まで支援に駆けつけました。

 教員として勤めた私立・長門高校を解雇されて2年。自分の裁判の一審は主張をまったく認めない不当判決で、裁判に展望を見いだせないでいました。

 そこに今回の判決。「きちんと現場を理解しようとしてくれる裁判官もいる」と考え直し、控訴審は15日の第1回弁論を迎えました。「判決に勇気づけられました。私も頑張ります」

マツダ裁判勝利 職場で感激

“パートさん希望生まれた”

“社会的責任果たさせるまで”

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(写真)マツダの防府工場前で訴える佐藤さん=19日、山口県防府市

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(写真)マツダ共闘会議の役員会であいさつする藤永会長=19日、山口市

 「非常に素晴らしい判決です。この判決を確信にして今後の運動に取り組むことが大事だ」

 19日朝の工場前宣伝に続き、山口市内で開かれたマツダ共闘会議(会長=藤永佳久・山口県労連議長)の役員会。高根孝昭事務局長はこう強調しました。

 山口地裁判決について、ある役員は「労働者を使い捨てる流れを、保護へと切り返していく重みがある」と高く評価。判決を傍聴し、組合で報告したという役員は「パートさんたちはみんな、希望が生まれたと喜んでいた」と紹介しました。

 原告15人のうち、判決の法廷に参加できたのは10人です。「よく来てくれた。あの判決を聞けたことがよかった」。原告の佐藤次徳さん(47)はそう喜びました。

 原告団を束ねる2代目の事務局長。県労連の専従幹事として唯一、争議に専念できる立場です。

 マツダで働き、福岡県飯塚市の実家に仕送りしていました。貯金はできず、「派遣切り」で寮まで追い出されました。

 県労連と出合い、社会の不公正を知って、立ち上がりました。

 「悪いのは社会的責任を果たさない大企業と、それを野放しにする政治だ。そう知ったからにはたたかって、現状を変えなければ明日はない」

 ただ、生活に追われました。再就職先はなく、実家に戻って親子で生活保護を受けた時期もありました。週1度、実家に郵送される原告団の「団結」ニュースを励みに、あきらめませんでした。

 この4年間、各地で同じように厳しい争議がたたかわれています。佐藤さんは「継続は力です。多くのたたかいの積み重ねによって勝ち取った判決です」と話します。

 原告の清水力志さん(42)は法廷で判決を聞き、涙があふれました。報告集会で「今日一日はこの判決に喜び、ゆっくり過ごしたい」と発言。しかし、現実は夜勤明けで法廷に現れ、2、3時間の仮眠をとって再び夜勤に入りました。

 判決の3日前から、原告団の名物、手作り・無添加のマドレーヌも準備しました。裁判後に原告らが集まる反省会に欠かせない一品だからです。

 清水さんは4年間、毎日10分間は争議について考えることを続けてきました。寝る前などに、裁判の資料などを読み込み、争議の意義を考える。日常の厳しさに流されないためです。「結果はどうあれ、悔いなく最後までたたかい抜きたい」

 判決の当日、地元の友人のマツダの社員から電話があり、「おめでとう」と喜んでくれました。同時に、「僕は法律を守らないブラック企業の社員になってしまった」と落胆していました。

 清水さんはこう思います。

 「裁判で誰もが傷つく。だからこそ、マツダは社会的責任を果たすことが必要です」


 山口地裁判決 正社員の代替にしてはならないという労働者派遣法の原則に立ち、派遣社員らを違法に働かせたマツダの雇用責任を認めました。原告13人について、同社の正社員としての地位を認め、救済しました。派遣受け入れの期間制限を逃れるため、同社が導入した直接雇用制度については、その運用実態から違法とし、「常用雇用の代替防止という派遣法の根幹を否定する施策」と断罪しました。


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