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2013年3月8日(金)

大震災2年

福島第1原発 増え続ける汚染水

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 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)が、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9・0)とそれに伴う巨大な津波で史上最悪の原発事故を引き起こして丸2年がたとうとしています。いまだに放射性物質を空気中に放出し続けるなど「収束」とは程遠い状況で、とりわけ放射性物質を含んだ大量の「高濃度放射能汚染水」の問題は深刻です。 「原発」取材班


「収束」にほど遠く

 福島第1原発の1〜4号機の原子炉建屋やタービン建屋の地下には、溶け落ちた燃料を冷却するために注水している水が、放射性物質を溶かし込みながら流入しています。東電は、高濃度放射能汚染水を処理して放射性セシウムなどを取り除き、再び原子炉に注水していますが、処理した後に出る塩分の濃い水や廃液などがたまり続けています。

 その量、なんと約26万トン。福島第1原発構内に所狭しと並んだ巨大なタンクに貯蔵していますが、原子炉建屋やタービン建屋の地下に1日約400トンの地下水が流れ込んでいるため、増設しても“焼け石に水”状態です。東電は、70万トンまでタンクを増設するとしていますが、福島第1原発の高橋毅所長は2月28日の会見で実際につくれるか明言しませんでした。

 仮に70万トンに増設しても、このまま汚染水の量が増え続ければ、約2年半でいっぱいになります。タンクの耐用年数も5年程度です。東電は建屋地下への地下水流入を減らす目的で、地下水を上流側でくみ上げて海へ流す、地下水バイパスの運転を予定しています。しかし、効果がどの程度かは不明です。

 このままではあふれかねない汚染水をどうするのか―。

汚染水海洋放出狙う東電

 東電が狙うのが汚染水の「海洋放出」です。東電はたびたび海洋放出をほのめかし、漁業関係者などから批判されると「関係省庁の了解なしに海へ出さない」といいますが、その意図を隠そうとしません。

 処理後の汚染水といっても放射性ストロンチウムをはじめ、さまざまな放射性物質を含んでいます。そのため東電は、処理後の汚染水をさらに「多核種除去装置(アルプス)」で処理する計画を進めています。62種の放射性物質を法令で定める基準値以下にできるとしています。

“水”の形で含む

 しかし、アルプスが東電の説明どおりの性能だとしてもトリチウムはほとんど取り除けません。トリチウムは水素に3種類ある同位体(原子核を構成する陽子の数は同じで中性子の数が異なるもの)の一つで、放射性物質です。3重水素とも呼ばれます。トリチウムは“水”の形で汚染水に含まれており、トリチウム以外の水素でできた水と区別することがむずかしいからです。

 東電によれば、処理後の汚染水に含まれているトリチウムは1リットル当たり100万〜500万ベクレルです。貯蔵されている処理後の汚染水には最大1300兆ベクレルのトリチウムが含まれていることになります。それでも、東電は汚染水の海洋放出に固執しています。

 2月28日に公表した「福島第一原子力発電所でのトリチウムについて」と題した資料には、トリチウムが自然界に大量に存在すること、1ベクレル当たりの被ばく線量は放射性セシウムなどに比べて少ないことなどが書かれています。トリチウムが入っている水を海洋へ放出してもたいした影響はないと言わんばかりです。

高線量廃棄物に

 高濃度の放射能を含んだ汚染水をめぐってはさらに困難な課題があります。

 アルプスを稼働させても除去可能な62種の放射性物質が、消滅するわけではありません。

 放射性ストロンチウムなど1立方センチ当たり数十万ベクレルを含む汚染水を同施設で処理すると、砂状の吸着材や泥状の液体に濃縮されて移行。23万トンの汚染水(濃縮塩水)を処理した場合、新たに高線量の廃棄物が約2900トン発生します。

 東電はこれらの廃棄物を高性能容器(HIC)と呼ばれる、直径150センチ、高さ180センチのポリエチレン製の容器に入れ、コンクリート製の箱状容器内に収めて約20年間「一時保管」させる計画です。

 20年後にこれらの廃棄物をどうするか、何も決まっていません。

 HICは、米国で低レベル放射性廃棄物の最終処分用に使用されている容器ですが、その耐久性に疑問が出ています。一つは放射線による劣化です。放射線照射による劣化の試験は米国における古いデータしかなく、劣化が始まると進展が早いことが指摘されています。さらに、紫外線にさらした場合の推定寿命が1〜2年であるなどの問題があります。このため原子力規制委員会の専門家会合は、再試験の必要性を指摘しています。

 たまりつづける汚染水の問題は、廃炉に向けた工程の進行を阻んでいます。抜本的な対策を早急に検討する必要があります。


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