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2013年1月22日(火)

アルジェリア人質事件

長期内戦 対立の歴史

威信失墜 強硬策に

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 アルジェリア南東部のイナメナス天然ガス関連施設で発生した武装集団による外国人人質事件について、アルジェリアのサイード情報相は20日、軍による作戦は終了したものの、犠牲者の数はこれまで明らかにされていた23人からさらに増える恐れがあると表明しました。仏テレビ局フランス24で語ったものです。各国から「人命尊重」が要請されるなか、アルジェリア政府や軍の強硬策が目立った事件でした。 (野村説)


通告なし 「拙速」の批判

 アルジェリア軍による外国人人質救出作戦は4日間という短い期間で作戦終了を迎えましたが、現地からの情報は錯綜(さくそう)し、人質の犠牲が不確かに報じられるたびに関係国に大きな動揺をもたらしました。

 襲撃事件は16日午前6時(日本時間同日午後2時)に起こり、翌17日正午(同日午後8時)にはアルジェリア軍が作戦を開始しました。作戦開始について、関係国との事前協議や通告などもなかったとの見方が一般的です。

 キャメロン英首相は17日、アルジェリア政府の拙速さを非難。「さらに悪いニュースを覚悟しなければならない」と述べ、オランド仏大統領も同日「悲劇的な終わり方」と述べるなど、作戦開始に対し、各国の不信感は募りました。

 アルジェリア政府は当初から「テロリストとの交渉には応じない」(内相)との強い態度を取りました。国民世論にも、1990年代の内戦によって多くの市民が犠牲になってきた背景から、政府の対テロ強硬姿勢を支持する下地がありました。

 現地からの報道によれば、あるテロ問題専門家は「対テロ強硬派のアルジェリアに人命尊重という観点はなかった」と指摘しています。

独裁による「警察国家」

 アルジェリア政府の対テロ強硬姿勢の背景には、90年代以降、同国で深刻化した内戦など、イスラム主義勢力との対立の歴史があります。

 アルジェリアでは90年、地方選挙で圧勝したイスラム主義勢力への反発から、世俗派の後押しを受けた軍部がクーデターにより政権を掌握。以降、政府軍とイスラム主義勢力との衝突が多発し、事実上の内戦で2000年までに15万人以上の犠牲者を出してきました。

 99年に就任したブーテフリカ大統領の事実上の独裁体制が続くアルジェリアでは、内戦などの対立の歴史を通じて「警察国家」による国民監視を徹底。一方でイスラム武装勢力は近年、国際テロ組織アルカイダとの連携を強め、外国人の誘拐やテロ、薬物・武器の密輸を繰り返すなど、活動の土壌を広げてきました。

 警備体制が厳重なはずの天然ガス関連施設が武装組織に占拠されたことは軍の威信を傷つけました。その回復とともに政権基盤がテロによって揺らぐ事態はなんとしても避けたいという体制側の思惑が、事件の早期決着を急いだ理由だともみられています。

周辺域 急速に不安定化

 アルカイダ系のイスラム武装組織「イスラム聖戦士血盟団」を率いるベルモフタール司令官は犯行声明で、ブーテフリカ政権が隣国マリに軍事介入したフランスに領空権使用を容認したことを批判。事件の目的は、マリで仏軍が展開するイスラム武装勢力掃討作戦への報復にあったといわれています。

 しかし一方で、襲撃の準備が「約2カ月前」から準備されてきたことが明らかになるなど、「(マリ介入は)良い口実」(ヘイグ英外相)で最初から身代金目的や経済的利益から犯行に及んだという指摘もあります。

 さらに事件の首謀者が、93年のニューヨーク世界貿易センタービル爆破テロ事件で終身判決を受け、米国で服役中のオマル・アブデルラーマン師らと米国人人質の交換を表明するなど、動機については依然不透明なままです。

 アルジェリアは原油や天然ガスの生産量でアフリカでも有数の資源国であり、多くの外国企業が進出している一方、天然資源の違法採掘が武装勢力の資金源になっているという説もあります。

 01年の米同時多発テロ以降、米国がすすめた「テロとのたたかい」は、政権基盤の比較的弱い北西アフリカにアルカイダ系武装勢力の温床を新たにつくり出しました。11年8月に独裁政権が崩壊したリビアから流出した大量の兵器の拡散もあいまって、周辺地域の治安は急速に不安定化しています。


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