2013年1月21日(月)
生活保護改悪 利用者の思いは
生きる自信、奪わないで
声あげ はね返したい
|
「生活保護を守れ!」―。生活保護基準の見直しを検討する厚生労働省社会保障審議会の部会がこのほど報告書を取りまとめたことに対して、生活保護利用者や支援者らが、生活保護改悪を阻止しようと声をあげています。
「生活保護は、最低賃金に連動している」と強調するのは、首都圏青年ユニオンの神部紅事務局次長。「最賃より高いことを理由に生活保護を切り下げようとするのは許せない。本末転倒で、最賃を引き上げることこそすべきだ」と話します。
福祉制度の基準
生活保護基準は就学援助や国民健康保険など保険税(料)の減免の基準になっています。自立生活サポートセンターもやいの稲葉剛代表理事は「生活保護基準の引き下げに連動してこれらの基準も引き下がる。貧困対策が後退することになり、国の責務を放棄するものだ」といいます。
同省は生活保護の見直しにあたり、同部会に対し、最も所得が低い10%の世帯の消費実態と生活保護基準を比較する方針を提示。同部会はその方針に基づいて検証し、60歳以上の高齢者世帯を除く世帯で、生活保護基準が低所得世帯の消費水準を上回ったとしました。
その低所得者世帯はどういう人たちか。稲葉さんは、こう指摘します。「福祉事務所が生活保護を申請しても受け付けられなかった人や生活保護のスティグマ(負のレッテルを貼ること)で必要としながら利用できない人が多い」と。
「生活保護基準と比較したのは、こうした人たちの消費実態。保護基準より低いのは当然だ。『結論先にありき』で厚労省は部会に検討させた」と批判します。
一方、「高齢者世帯では、保護基準が低所得世帯の消費水準より低いという結果が出たのは、老齢加算が2006年に廃止されたからだ。老齢加算を復活させるべきだ」と強調します。
同部会の検証では、子育て世帯については生活保護基準が低所得世帯の消費水準より高い結果が出ました。
子育て世帯減額
生活保護問題対策全国会議(代表幹事・尾藤廣喜弁護士)は16日、声明で、貧困の連鎖解消のために政府が学習支援の強化などをはかる一方で、子育て世帯への現金支給を大幅に減額することは矛盾していると批判。生活保護の「引き下げが実施されれば、生活保護世帯の子どもたちは、生活保護から脱却することができず、貧困の連鎖が強まることが必至だ」と指摘します。
千葉県内で生活保護を利用する女性(33)は、適応障害と診断され仕事を辞めざるを得なくなりました。「生活保護で命をつないで、いま、やっと前向きに就労について考えられるようになりました。保護費が低くなったら、いまのように前向きに生きられる自信がない」
生存権裁判を支援する全国連絡会の前田美津江事務局長は「生活保護の不当な削減を許さない。声をあげてはね返していきたい」と強調します。
(岩井亜紀)