2012年9月2日(日)
政権交代3年とマスメディア
消費税増税
世論に挑戦した異常報道
消費税増税法案成立までの全国紙をはじめとした巨大メディアの翼賛報道は歴史に残る異常さでした。
衆院通過(6月26日)までの1カ月間の「翼賛」社説は、「朝日」14本、「読売」16本など、連日のように法案採決をあおりました。
衆院通過で“安心”したのか7月は本数が減りましたが、8月、日本共産党など野党7党・会派による内閣不信任案提出で増税法案の行方が不透明になると俄然(がぜん)、増税与党ぶりを発揮。7日から11日までの5日間、「朝日」と「読売」は連日の5本、「毎日」4本、「日経」3本と、再び増税をあおりにあおったのです(表参照)。
持ち上げる
![]() (写真)消費税増税法案の採決をあおり、可決・成立を評価する全国5紙の社説 |
その特徴は、消費税増税反対の世論が多数なのを承知のうえで、世論に挑戦していることです。「毎日」11日付は消費税増税法成立を「政治史上画期的なこと」とし、その理由の第一に「中身が国民に負担を求める純粋増税法だからである」としました。そのうえ、「7月末の毎日新聞世論調査では61%が依然として『今国会での消費増税法案成立を望まない』と答えている」と書き、国民世論を無視して痛みを押し付ける政治を「決める政治」と持ち上げているのです。
「朝日」は社説で連日、増税法成立へ指南役を果たす一方で、6日付で「消費税『朝日新聞はどっちだ』読者から声」という特集を掲載。「消費増税法案について、朝日新聞は社説で『必要だ』と訴えていますが、消費増税に批判的な記事もあり」と、賛否のバランスをとっているかのように主張しています。
しかし、このなかで大野博人論説主幹が「社説は朝日新聞の意見と思っていただいて構わない」と語り、記事でも「朝日新聞は2007〜08年に掲載したシリーズ社説『希望社会への提言』で、消費増税の必要性をはっきり打ち出した」とのべているように、消費税増税を社論とすることに何の反省もありません。
投げ捨てる
![]() (写真)7野党・会派で野田内閣不信任決議案を横路衆院議長(中央)に提出。右から2人目は穀田恵二国対委員長=8月7日、国会内 |
そこには、「権力監視が仕事であるメディアが『増税を容認する』ことへの疑問はあるだろう。しかし、…国の再生に向けて、政治に『結果』を求めることが必要になってきた」(星浩編集委員=当時、「朝日」1月8日付)と、権力の監視というメディアの役割を公然と投げ捨てた姿が表れています。
しかも、消費税増税への異常な執着は、いま始まったことではありませんでした。政権交代直後から、全国紙は消費税増税をけしかけ、菅直人副総理(当時)が消費税論議をはじめる意向を示すと、「日経」(10年2月16日付)は「政府内の無駄減らしを終えないと議論に入らないとの持論を半歩、転換させたものと評価したい」と歓迎。「朝日」も、その翌日付の紙面で「菅財務相発言 消費税封印の呪縛を解け」と題し、「社会保障の安定財源を確保するには、景気の動向に左右されにくい消費税は最も有力な手段」としました。
その直前には、「朝日」「日経」「読売」の論説責任者がてい談を実施(同年1月30日付)。「消費税の問題に手をつけないと将来の社会保障制度は維持できない」(日経)、「デフレ不況が一段落したら、消費税増税を軸とする税制の抜本改革に真剣に向き合わなくてはなりません」(朝日)などと足並みをそろえていたのです。
(メディア取材班)
![]() |











