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2012年9月1日(土)

政権交代3年とマスメディア

日米関係

民主党政権に「変節」迫る

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 政権交代から3年。民主党は、自らの公約を投げ捨て、国民の期待を裏切り続け、自民党以上に自民党的な政治にゆきつきました。民主党の公約投げ捨てと自民党化を支え、ときには叱咤(しった)激励してきたのがマスメディアでした。全国紙の論調で検証します。1回目は「日米関係」です。

 (引用は断りのない限り社説)


写真

(写真)日米同盟の危機だとあおって普天間基地の「県外移設」を批判した全国紙

 「国民の生活が第一」を掲げ、自公政権による「構造改革」路線の転換、「対等な日米関係」などを公約した民主党政権の登場は、自公政権を応援してきたマスメディアに大きな衝撃を与えました。

 政権交代直後、インターネット上では、「産経」記者が「産経新聞が初めて下野」と書き込んだことが話題になり、「読売」の渡辺恒雄会長は雑誌インタビューで“自民党が下野することで自らの影響力が低下するのではないか”と問われる状況でした。

 これらの新聞は、民意にもとづいて自らのスタンスを問い直すどころか、民主党に政権公約の放棄と変節を迫りました。その最大の対象が対米関係でした。

普天間移設

 「日経」2009年9月2日付は「鳩山政権は対米政策で『君子豹変(ひょうへん)』せよ」と迫り、沖縄・普天間基地の「県外移設」などの政権公約に背くことを説き、「読売」も「基本政策は継続性が重要だ」(同年9月1日付)と題し、「(普天間)移設見直しは、日米合意を破棄するに等しく、同盟関係を損なうのは必至だ」と主張しました。

 鳩山政権による国民への裏切りも、米軍普天間基地問題から始まりました。総選挙では、「国外、最低でも県外(移設)」と公約していたのに、政権につくと、閣僚から「嘉手納統合案」が飛び出すなど迷走を開始。米政府もゲーツ国防長官(当時)が09年10月に来日し、辺野古移設がなければ普天間に居座るとどう喝しました。

 こうしたなか、一見、政権交代を支持していた「朝日」も含め、全国紙は、米国の尻馬に乗るかのように、自公政権時代の「辺野古移設」(県内移設)論を主張。鳩山政権を批判し、公約撤回を迫ったのです。

 「朝日」は船橋洋一主筆(当時)がコラムで「現実には『辺野古沖』案と海兵隊のグアム移転案を基地統合再編の第一歩と位置づけたい」(同年11月5日付)と、いち早く「辺野古移設」案しかないとの態度を示しました。

 その後も、「朝日」は「普天間問題 日米関係の危機にするな」(同年12月10日付)、「普天間先送り 鳩山外交に募る不安」(同年12月16日付)と、“日米同盟危機”論をあおったのです。しかも、その内容は「日米関係の基盤は安保条約であり、日本が基地を提供するのは不可欠の要件である」(10日付)と基地提供を絶対化。「在日米軍基地は日本防衛とともに、この地域の安定を保ち、潜在的な脅威を抑止する役割を担っている」(16日付)と“抑止力”論の立場に立つものでした。

安保絶対視

 もちろん、他の全国紙も「普天間協議中断 同盟の危機回避へ決断せよ」(「読売」同年12月10日付)、「普天間の決断遅れで深まる3つの危機」(「日経」同前)と“日米同盟危機”をあおりました。「毎日」は「普天間の永続避けよ、問われる首相の指導力」(同年12月16日付)で「普天間問題を、日米同盟全体を揺るがす発火点にしてはならない」という点では同じでした。

 全国紙の論調の根底には、日米安保体制の絶対視がありました。

 2010年1月19日は、現行安保条約調印50年でしたが、その日の全国紙社説は日米安保体制を批判的に扱ったものは一つもありませんでした。「読売」、「産経」、「日経」が正面から同盟強化を唱えただけでなく、「朝日」、「毎日」も「同盟の効用」や「重層的深化」を求めたのです。

 鳩山首相は同年5月、「学べば学ぶほど沖縄の米軍の存在全体の中での海兵隊の役割を考えたとき、すべて連携している。その中で抑止力が維持できるという思いに至った」とのべ、公約投げ捨てを正式に宣言しました。鳩山政権の迷走と裏切りの根本には、米国いいなり政治から抜け出せない民主党政権の限界がありましたが、抜け出せないよう圧力をかけ続けたのが巨大メディアの実態でした。

 (メディア取材班)


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