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2012年8月24日(金)

主張

「震災関連死」

助かった命を失わせた責任

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 地震や津波から助かった、助けられた命が、その後の避難の中で失われてしまう―。絶対あってはならない実態が明らかになりました。政府の復興庁がまとめた、東日本大震災における「震災関連死」についての報告です。

 地震や津波は自然現象ですが被害を少なくするのは政府や自治体など政治の責任です。とりわけ避難のための移動や避難所での劣悪な生活環境のため命を失わせるような事態は絶対に防がなければなりません。「震災関連死」についての報告はその責任がおろそかにされたことを浮き彫りにします。

避難対策の劣悪さ

 復興庁がまとめた「震災関連死」についての報告は、遺族が申請し市町村が災害弔慰金の支払いを認めたもので、実態から見れば「氷山の一角」にすぎないことは明らかです。しかし、そうした報告によってさえ、避難誘導や避難所生活など、政府や自治体の責任に属する対策の劣悪さで「震災関連死」が続出していることが明らかになっています。

 全国の自治体の協力でまとめた今年3月末までの「震災関連死」は1632人、決して少ない数ではありません。福島、宮城、岩手の被災3県を中心に1都9県にのぼります。66歳以上が約9割です。

 そのうち「震災関連死」の死者数が多い市町村と、東京電力福島原発の事故で避難指示が出された市町村の1263人を対象に原因を分析すると、避難所などでの生活での肉体や精神の疲労によるものが約3割、避難所などへの移動中の疲労が約2割などだったと報告書は指摘します。

 明らかになった重大な問題のひとつは、原発事故で避難させられた福島県での「震災関連死」761人という多さと、そのなかでも避難所などへの移動中の死者が380人にのぼることです。

 昨年3月11日の震災のさい、福島原発では電源が失われて原子炉が冷却できなくなり、炉心の溶融や建屋の爆発を起こしたため、周辺住民はどこへ逃げればよいのかもわからないまま避難を余儀なくされました。いまだに16万人が避難生活を送っています。報告は避難先の病院から別の病院へ避難させられたり、長時間座ったままの移動もあったと指摘します。原発震災の「関連死」は、政府と東電による“人災”そのものです。

 「震災関連死」の大きな割合を占める避難所生活の劣悪さによる健康破壊も深刻です。まだ真冬の寒さが続く被災地で冷たい床の上に薄い毛布1枚だった、寒さで布団から出ることもできず体を動かさなくなった、狭い避難所で疲労困憊(こんぱい)した―などの訴えは、避難所生活の厳しさを浮き彫りにするものです。法律にもとづき行政が設置する避難所で助かった命が失われている現実は、政治の責任をきびしく問うものです。

生活再建を実現してこそ

 避難所から仮設住宅や借り上げ住宅に移っても、いまも避難生活は続いています。生活難やなれないなかでのストレスも深刻です。「震災関連死」は決して過去の問題ではありません。

 報告書は被災者への「心のケア」だけでなく、地域経済や職業など生活再建が実現してこそ健康も回復できると指摘します。被災者の生活再建を最優先した震災復興をさらに強める必要があります。


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