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2012年8月20日(月)

福島原発事故

保安院「勉強会」が07年に危険性指摘

東電は津波対策とらず

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 東京電力が「想定外津波」が原因だといい張る福島原発事故。しかし、原子力安全・保安院などによる研究グループが、「想定外津波」が原発の重大事故を招く可能性について調査し、事故の4年も前に詳細な報告書をまとめていたことが注目されています。


 グループは、保安院、原子力安全基盤機構(JNES)や東電などの電力会社が2006年に合同で立ち上げた「溢水(いっすい=水があふれること)勉強会」。

 「勉強会」は、米国の規制当局がキウォーニー原発を調査し、配管破損による建屋内部の「溢水」が「特に電気機器にかなりの損傷を与える可能性がある」と指摘したことを重要視。インドネシア・スマトラ島沖大地震の津波でインドのマドラス原発の非常用海水ポンプが水没し運転不能になったことを受け、日本の原発の「現状を把握する」ために調査を始めました。

「1分で喪失」

 07年1月にまとめた報告書によると、「勉強会」は06年6月に福島第1原発4、5号機を調査。建屋外の非常用海水ポンプや発動機のかさ上げなど「想定津波」への対策しかとっていない実態を掌握しました。東電側も、高さ14メートルの津波が襲えば建屋内への浸水で電源喪失し、「原子炉の安全停止に関わる電動機、弁等の動的機器が機能を喪失する」と認めました。

 「勉強会」はまた東電側から、タービン建屋やサービス建屋の入り口が水密性の扉ではなく、非常用ディーゼル発電機の吸気口も敷地からわずかの高さしかないほか、非常用海水ポンプは原発の敷地レベル(海抜13メートル)より低い海抜4・5メートルの屋外に設置されており、当時5号機で想定されていた5・6メートル超の津波が襲えば「1分程度で電動機が機能を喪失する」という説明を受けていました。

 保安院は「勉強会」の報告にもとづき、具体的な津波対策の検討を東電に要請しました。しかし東電は、建屋入り口の水密性確保などの対策をとりませんでした。これが、今回の重大な事故を招いたのです。

事実上認める

 事故後、東電は「必要な対策をとらなかったという事実はありません」とする見解を発表(5月16日)。しかし、その中で「万一非常用海水ポンプが津波で冠水し機能を失ったと仮定しても(中略)空冷の非常用ディーゼル発電機が設置されているため、建屋敷地レベルに津波が到達しなければ全電源喪失には至らないと考えていました」と述べ、必要な対策をとらなかったことを事実上認めました。

 東電は「勉強会」第3回会合(06年5月11日)で提出した資料で、「想定外津波」への対策に言及しつつ、「リスクとコストのバランスを踏まえた検討が別途必要」だと、利益と安全をてんびんにかける姿勢を示していました。08年には、貞観地震(869年)と同規模の津波が襲う可能性を知りながら、その後も十分な対策をとりませんでした。

 日本共産党の吉井英勝議員は3日の衆院経済産業委員会で、福島原発事故は、「勉強会」で津波の影響が想定されながら保安院や東電が利益優先で対策を怠ったことが引き起こした人災であり、「不作為の責任が問われる」と批判しました。枝野幸男経産相は「もっと対策をとっておけば、こうした重大な事故に至らなかったのではとの指摘は真摯(しんし)に受け止める」と答弁せざるをえませんでした。

写真

(写真)「溢水勉強会の調査結果について」と題する報告書


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