2012年8月6日(月)
中東問題・対ロ・対中…
米共和党“大統領候補”の初外遊
ロムニー氏に「?」
“認識は現実離れ”と米誌
米共和党のロムニー前マサチューセッツ州知事は7月下旬、事実上の同党大統領候補として初外遊し、同月24日には米ネバダ州リノで外交演説を行いました。“強い米国”を強調しましたが、疑問の声も出ています。(ワシントン=小林俊哉)
みずからの外交姿勢に対する国際的認知を目指して英国、イスラエル、ポーランドを訪問したロムニー氏でしたが、ロンドンでは、オリンピックの準備態勢を批判して、キャメロン首相らからひんしゅくを買いました。
占領に触れず
イスラエルでは、パレスチナの経済的困苦とイスラエル経済を対照して、「文化の違い」だと主張。イスラエルによる占領や経済封鎖には一切触れない主張で、アラブ文化へ蔑視だとの批判を浴びました。
米メディアからも「あざだらけの外遊」(ワシントン・ポスト紙)と評され、同氏の外交政策にもあいまいさが指摘されています。
同氏がネバダ州での外交演説で示した認識は「世界は危険であり、破壊的であり、混沌としている」というもの。それなのに、オバマ氏は同盟国をないがしろにし、“敵対国”にばかり関与する“軟弱姿勢”だとの主張です。
これには、「実際は世界は平和だ」との反論もあります。
外交に詳しいジャーナリストのファリード・ザカリア氏は米誌『タイム』(6日号)で、イランは制裁によって孤立し、旧ソ連とは異なって中国は米国と覇権を争っているわけではなく、国際テロ組織アルカイダも弱体化しているとして、ロムニー氏の認識は現実離れだと指摘します。
ロムニー氏は、イランの核開発問題では、国際社会による経済制裁が功を奏していないと批判し、イスラエルが同国を攻撃した場合は「イスラエルの自衛の権利を尊重する」と述べました。しかし、米国の外交専門家には、イスラエルによる攻撃は中東地域全体を不安定化させるとの懸念が出ています。
選挙対策とも
また、ロムニー氏は、ブッシュ前政権でぎくしゃくしたロシアとの関係改善に動いたオバマ政権の姿勢にも批判を強めています。とくに、戦略核兵器削減条約(新START)の締結と東欧へのミサイル防衛基地建設の撤回を「(ロシアへの)一方的譲歩だ」と批判しました。ただ、新START条約を破棄するのかどうかは明らかにしていません。
中国については、「人民の権利を無視している」「貿易でも、知的所有権の恥知らずな違反を行っており、通貨を操作している」と批判。この主張に対し、ワシントン・ポスト紙は「中国政府との関係をどう管理していくかの建設的なアイデアが一つもない」(1日付社説)と指摘します。
ロムニー氏の主張については、外交政策というよりは選挙対策だとの見方もあります。イスラエルへの支持を強調するロムニー氏に対し、ニューヨーク・タイムズ紙は「ロムニー氏の真の聴衆は、米国内のユダヤ系市民だ」「(ユダヤ)票を得ようと、攻撃的な調子の訴えをしている」(7月31日付社説)と指摘しています。