2012年7月20日(金)
シリア最高幹部殺害
政権中枢に迫る反政府軍
安保理対立は続く
厳重な警備が敷かれたシリアの首都ダマスカスの治安機関本部で18日に起きた爆弾テロは、アサド政権中枢にまで反体制派の影響力が浸透していることを示しました。首都中心部での戦闘は4日目を迎えていっそう深刻さを増す中、国連安全保障理事会は米ロの対立から一致した対応が取れないでいます。(野村説)
18日の治安機関を狙ったテロが起きた時、閣僚や治安幹部らによる最高治安会議が開かれていました。体制側の離反兵ら数万人で構成しているとされる「自由シリア軍」のスポークスマンは犯行を認め、大統領側近の護衛が会議室に爆弾を仕掛け、会議中に起爆させたと述べました。
この爆弾テロで、ラジハ国防相とアサド大統領の義理の兄であるシャウカト陸軍副参謀長らが死亡。シャアール内相も重傷を負ったと伝えられています。
17日、「自由シリア軍」は「ダマスカスを解放する作戦を始めた」と表明していました。この間、同軍は湾岸のサウジアラビアやカタールなどから武器の供与を受け、組織化を進めてきたといわれています。
ムスリム同胞団などで構成する反政府組織「シリア国民評議会」のシダ議長は18日、国防相らが死亡したことを受け、ロイター通信に対し「アサド政権の崩壊は非常に近い。数週間から数カ月の問題だ」と語り、反体制派の攻勢が政権中枢にまで及んでいることを評価しました。
報道では、アサド政権が自身の出身母体であるアラウィ派の市民に武器を供与したり、同派の民兵組織「シャビーハ」のメンバーが民家に押し入って市民を殺害しているとも伝えられています。他方、シリア国民評議会や自由シリア軍など複数の反政府勢力も一枚岩と言えず、際限なく続く主導権争いや相互不信による暴力の悪循環によって、首都でのさらなる混乱の拡大が懸念されています。