「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2012年6月5日(火)

社会リポート

関越道バス事故

安全・格安 両立しない

中小旅行業者が警鐘

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 関越自動車道で7人が死亡した高速ツアーバス事故(4月29日)。事故の背景には規制緩和で“雨後のたけのこ”のように増えた「バス会社」と、運賃を安く買いたたく、悪質な「旅行会社」の構図がありました。「格安」と「安全」は両立しない、と声をあげる中小の旅行業者は…。(遠藤寿人)


写真

(写真)客でにぎわう高速バスターミナル=大阪市北区梅田

 「利益中心のズサンな契約を強いる旅行会社もあるのだろう。だが、少なくとも、正常に取引している中小の旅行会社を一緒にしてもらっては困る」と話すのは大阪市で30年、旅行会社を営む「センターツーリスト」取締役の松本武夫さん(71)。

 今回の事故ではバス会社「陸援隊」(千葉県)とツアーを企画した旅行会社「ハーヴェストホールディングス」(大阪府)との間に仲介業者2社が介在、4社間の契約書も交わされていませんでした。

 松本さんは「圧倒的多数の旅行会社はバス会社と直接契約する。ブローカー(仲介業者)が介在することはほとんどない」と話します。

過当競争に突入

 同じ関西、神戸市で50年以上、営業する「国際ツーリストビューロー」代表取締役の松岡武弘さん(66)は、「規制緩和でバス会社が増えたうえ、『安いことは、いいこと』という価値観がまん延している。あくどいことをしなくてもバス代を値切りやすい状況がつくられている」といいます。

 自民、公明、保守政権による2000年の規制緩和で貸し切りバス業者は、2336社(1999年度)から、4492社(2010年度)へと、ほぼ倍加、過当競争に突入しました。

 松本さん、松岡さんが力説するのは、バス会社は増えても『旅行需要』が激減している事態です。「だからバス会社は何としても仕事がほしい。運賃を下げざるをえない」と松岡さんはいいます。

 日本旅行業協会の資料で94年度と10年度を比較すると、(1)旅行人数は、全体で約1800万人減、国内2100万人減、海外300万人増(2)旅行消費額は、全体で約4兆円の減。国内3兆円減、海外1兆円減―。国土交通省が成長戦略で重点項目にする、「インバウンド(訪日観光客)」だけが2・5倍に増えています。(表参照)

表

「潜在」需要増か

 松岡さんは「新聞の旅広告、テレビの旅番組、観光町おこしなどを見ると、国民の閉塞(へいそく)感が強まるなか、“癒やしの空間”“日常からの解放”である旅への『潜在』需要は増えている」と推察しています。その反映が、夜行の格安ツアーバスで来てディズニーランドで1日遊んで帰る強行日程の旅や、安い、近い、短い、旅で済ます傾向の強まりと指摘します。

 ツアーバスは旅行会社が運行を企画し「単に2地点間の移動のみを主たる目的」とした「募集型企画旅行」です。路線バスと違って道路運送車両法の適用を受けません。

 旅行会社は主にインターネット上の販売会社を通じて乗客を募集し、運行はバス会社に委託する仕組み。年間利用者は600万人。

 インターネットでチケットを購入し、引き落としで料金を払う。「便利」ですが、お客と業者の「顔」はおたがいに見えません。

 松岡さんはいいます。「うちら中小の旅行会社はお客の『顔の見える営業』をしています。八百屋や魚屋と同じですわ。あほなことできへん。安全・安心の『旅』を提供することが絶対ですわ」

 松本さんも話します。「格安航空会社も世の中は歓迎ムード一色だ。安全面をおろそかにしていないか不安でならない。だれのための規制緩和なのか。国土交通省の責任は重い」


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって