2012年6月5日(火)
シリアへの軍事介入
米国内 見解分かれる
【ワシントン=小林俊哉】市民の死傷者が増す一方で打開の見通しがなかなか立たないシリア情勢をめぐり、米国内では軍事介入の是非をめぐって識者の間で見解が分かれています。
キッシンジャー元国務長官は3日付の米紙ワシントン・ポストで、軍事介入に否定的な見解を表明しています。
同氏は、「体制転覆」を目的としながら泥沼化を招いたイラク、アフガニスタン戦争からやっと抜け出そうとしている米国にとって、「また同じ地域で同じような課題に直面しそうな新たな軍事関与を行うことが、どうして正当化できようか」と主張。介入するにしても、その後のシリアの統治のあり方をめぐる国際合意や、一定の期間で達成可能な政治目標などが明確でなければ、「新たな内戦」に突入するだけだと論じています。
一方、同じワシントン・ポスト紙は、社論としてオバマ政権にシリアへの軍事介入を求めています。1日付の社説では、介入に成功の保障はないものの、「アサド体制を終わらせ、宗派間紛争を予防し、地域戦争に発展することを阻止できそうだ」と主張しています。
野党・共和党の大統領候補ロムニー前マサチューセッツ州知事は、オバマ大統領の対シリア政策を「弱腰」だと批判。反政府派への武装援助を主張しています。同党の有力者マケイン上院議員は、シリアへの空爆まで主張しています。
オバマ政権は、軍事介入への慎重姿勢を崩していません。武装支援についても、反政府派の勢力構成の見極めが必要だとしています。秋に大統領選を控え、新たに戦端を開くことへの「政治的忌避感」も指摘されます。
ただ、シリア国内での悲惨な事態が報道されるなか、米国務省内にもいら立ちが募っています。クリントン国務長官は、訪問先のコペンハーゲンで5月31日、制裁に否定的なロシアについて、「(民主体制への)政治的移行について努力しなければならないときに、旧体制への支援を図っている」と露骨に不満を表明しています。
国連安保理は今週もシリア情勢をめぐる協議を続けます。6月は中国が議長国です。








