2012年5月27日(日)
“公約葬れ”迫る自・公 すり寄る首相
「最低保障年金」「後期高齢者医療廃止」
消費税増税への協力条件
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「社会保障と税の一体改革」を審議する衆院特別委員会で自民・公明両党は政府・民主党に対し、消費税増税に協力する条件として後期高齢者医療制度廃止や最低保障年金創設の撤回を迫っています。野田政権はすり寄っていますが、それが民主党内に新たな矛盾を広げています。
公約撤回検討も
「(消費税増税に)賛成する最低条件は、みなさんが最低保障年金をあきらめる、国民年金と厚生・共済年金の一元化をあきらめる、後期高齢者医療の廃止は撤回する、子ども・子育て新システムには善処すること」。自民党の石原伸晃幹事長はそうのべて「総理の手で民主党のマニフェストを葬りさる」よう迫りました。(21日)
民主党は2009年の衆院選マニフェストで、後期高齢者医療制度は「年齢で差別する制度」だとして廃止を公約しました。しかし政権につくと廃止を先送り。年齢による差別という根本を変えない「改革案」をまとめましたが、その法案提出も棚上げしています。
21日の特別委員会で自民党議員から「改革案」は「現行制度の継続そのもの」と指摘されると、小宮山洋子厚生労働相は「マニフェストと変わってきているというのはご指摘のとおり」と認めました。
「だったらもう、こだわることはない。廃止するのはやめるといえば(消費税増税への)一つの障害は消える」とたたみ込まれた野田佳彦首相は、「どうやって現実的に対応するか判断したい」と廃止公約の撤回を検討する考えを示しました。
22日の特別委員会では公明党が「現在の年金制度をもとに議論すれば、実のある『一体改革』の議論ができる」と、民主党の“抜本改革案”である最低保障年金制度創設を取り下げるよう迫りました。
岡田克也副総理は「各党間で協議し、成案がえられれば、民主党案にこだわる必要はないと考えている」「(現行制度の手直しが)ベストだとなれば、それを採ることにちゅうちょはない」と答弁。協議の場ができれば民主党案を撤回する考えを示しました。
「違和感覚える」
野田首相は自民党に「骨格の考え方にそんなに差はない。ぜひ知恵を出し合って結論を出したい」「野党第1党の提起はしっかり受け止めて成案をえたい」とさかんにすり寄る姿勢を見せています。
それに対し民主党内からは、「しっかりと党の立場を踏まえたうえで政府には答弁してもらいたい」「柔軟対応がにじみ出ているのは違和感を覚える」(前原誠司政調会長、22日の記者会見)などの不満がでています。
マニフェストにはない消費税増税に突き進み、公約した後期高齢者医療の廃止などを完全に投げ捨てる―国民の批判はまぬがれません。それが民主党内に新たな矛盾を招いています。