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2012年5月26日(土)

東京地裁に国公労連

国家公務員賃下げ 国を提訴

特例法違憲 賠償を要求

原告241人

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 国家公務員の賃金を平均7・8%削減する特例法(賃下げ法)は憲法違反として、日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)は25日、国に賃金の減額分や慰謝料などの損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。原告は国公労連と加盟労組の組合員241人です。


写真

(写真)東京地裁に入る原告ら=25日、東京地裁前

 賃下げ法は昨年6月、政府が人事院勧告に基づかずに一方的に国会に提出しましたが、法案をめぐって与野党が対立。民主、自民、公明3党が密室談合のうえ議員立法で法案を提出し、2月29日に強行成立させました。4月から減額された賃金が支給されています。

 記者会見で国公労連の宮垣忠委員長は、使用者である国からの賃下げ提案に対して、公務員労働者には対抗する手段がないと指摘。それを3党の議員立法で、組合の意見も聞かずに成立させたことは、国家公務員の基本的人権をふみにじるものであり、見過ごすことはできないとのべました。

 加藤健次弁護士は、賃下げという不利益変更には労働者の合意が必要だと強調。にもかかわらず、政府はその努力を尽くさなかったうえ、人事院勧告を事実上無視したことは憲法に抵触すると語りました。

 提訴に先立って東京地裁前で開かれた集会では、全労連の大黒作治議長が「国の不当な措置に断固抗議する」と表明。日本航空や社会保険庁の不当解雇にふれ、解雇自由、賃下げ自由の社会にするかどうかが問われるとして、全面的に支援すると語りました。愛知の原告は、「月3・2万円減らされた。法律を守るべき政府が憲法をふみにじることは絶対に許せない」と訴えました。

解説

前例のない人権侵害

 国公労連が国家公務員の賃金引き下げ法を憲法違反として提訴したことは、憲法の原則を厳格に守るという法治国家としてあるべき姿を取り戻そうとするものです。

 賃下げ法は、二重、三重に憲法をふみにじる異常なやり方で強行されました。

 一つは、憲法28条で保障された労働基本権の一部を国家公務員から不当に奪っているもとで、一方的に強行されたことです。これは米軍占領下の1948年、労働組合運動の高まりを恐れたGHQ(連合国軍総司令部)の要求でとられた措置で、国家公務員は、労働組合が政府と交渉して賃金、労働条件を決めることができません。こういう無権利状態にある労働者の賃金を、まともに意見を聞くこともなく大幅カットするやり方は、国家権力による人権侵害といえます。

 二つは、労働基本権が制限されたもとで、代償機関として設置されている人事院を政府が無視した問題です。政府は、人事院が毎年出す勧告にもとづいて国家公務員の賃金を決めなければなりません。これは国家公務員法28条に定められたルールです。

 しかし、政府は昨年6月、人事院勧告にもとづかずに、平均7・8%削減する法案を国会に提出しました。前例のない暴挙です。

 三つめは、民主、自民、公明の3党の密室談合による議員立法で法律を押し通したことです。

 法的根拠もない政党間の密室談合で、人事院勧告のマイナス0・23%実施の体裁をとりながら、7・8%削減するというきわめて悪質なやり方でした。国会議員が勝手に談合して法律をつくって、国家公務員の賃金を決めてしまうというのは常軌を逸した無法行為といわざるをえません。

 このように賃下げ法は、数々の憲法違反のうえに成立したものです。国家公務員の労働組合である国公労連がこの問題を放置せず、提訴に踏み切ったのは当然といえます。(行沢寛史)


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