2012年4月19日(木)
どうみる 石原都知事の尖閣購入発言
紛争への介入は問題解決に障害
東京都の石原慎太郎知事が「東京都が尖閣諸島を買う」と述べた発言が波紋を広げています。どうみればいいでしょうか。
![]() (写真)尖閣諸島=2004年11月、穀田恵二衆院議員撮影 |
尖閣は日本の領土
琉球諸島西方の東シナ海に位置する尖閣諸島は、魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島の5島と、沖の北岩、沖の南岩、飛瀬岩の3岩礁からなり、面積は5・56平方キロメートルで、甲子園球場の約140個分の広さです。
尖閣諸島に対する日本の領有には、歴史的にも国際法上も明確な根拠があります。日本共産党は、同諸島の日本領有が正当であることについて1972年に見解を発表し、さらに2010年10月により踏み込んだ見解を発表しています。
尖閣諸島の存在は、古くから日本にも中国にも知られていました。しかし、近代に至るまでいずれの国の領有にも属さない、国際法でいう「無主の地」であり、無人島でした。日本政府は、1895年1月14日の閣議決定で尖閣諸島を日本領に編入しました。これが、歴史的には最初の領有行為となりました。
この行為は、「無主の地」を領有の意思をもって占有する、国際法でいう「先占」に当たります。それ以降、今日に至るまで、尖閣諸島は、戦後の一時期、米国の施政下に置かれたことはありましたが、日本による実効支配が続いています。以上の歴史的事実に照らして、日本による領有は国際法上明確な根拠があります。
中国側は、尖閣諸島周辺で石油天然ガスの海底資源の存在が指摘されるようになってから領有権を主張しています。しかし、中国は1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議も行っていません。中国は、1970年代に入ってからにわかに尖閣諸島の領有権を主張し始めました。その主張の中心点は、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだというものです。
しかし、日清戦争の講和を取り決めた下関条約とそれに関するすべての交渉記録によれば、日本が中国から侵略によって奪ったのは台湾と澎(ほう)湖(こ)列島であり、尖閣諸島はそこに含まれていません。
日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による侵略とはまったく性格が異なる正当な行為であり、中国側の主張が成り立たないことは明瞭です。
紛争解決のために
訪米中の石原氏は16日(日本時間17日未明)のワシントンでの講演で、「東京都が尖閣諸島を買うことにした。東京が尖閣諸島を守る」と突然、表明しました。
報道によれば講演後の記者会見で「面白い話だろ。これで政府に吠(ほ)え面かかせてやるんだ。何もしなかったんだから、政府は」(「朝日」18日付)とも語り、その政治的意図をあけすけにしました。
しかし、歴代政府の尖閣諸島問題への対応に不満があるからといって、一地方自治体である東京都が「尖閣」を購入し紛争に介入することを正当化することはできません。
尖閣諸島をめぐる問題を解決するために、何よりも重要なことは、領有の歴史上、国際法上の正当性を、国際社会および中国政府に対して理を尽くして主張することです。
国家間で意見の違いが起こった場合、大切なのは、問題をすぐに政治問題にすることをいさめ、実務的な解決のルールにのせ、話し合いで平和的に解決することです。
昨年12月の日中首脳会談でも、「東シナ海を『平和、協力、友好の海』とするための協力の推進」が確認されています。
石原氏は「尖閣諸島を守る」といいますが、同氏の主張は、尖閣諸島問題を政治問題として先鋭化させ、両国間の話し合いによる平和的解決を逆に遠ざけるだけです。 (山田英明)
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