2012年4月8日(日)
国連事務総長 シリア殺りく停止を
部隊撤退通告後の攻撃非難
シリアのアサド政権は、暴力停止のためのアナン国連・アラブ連盟特使(前国連事務総長)による調停案の履行に合意し、市街地からの部隊撤退を通告した後も、軍による攻撃を続けています。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は報道官による声明で、市民の殺りくが続いていると厳しく非難し、すべての軍事行動停止の誓約を守るよう要求しました。(カイロ=小泉大介、外信部=松本眞志)
デモ弾圧で女性や子ども犠牲
シリア情勢をめぐっては、アナン氏が2日、自身の調停案を10日までに履行することでアサド政権が合意したと発表。5日には同特使報道官が、3地域で軍撤退を開始し、完全な暴力停止期限を12日に設定したとアサド政権側が通告してきたことを明らかにしました。同日には国連の停戦監視団先遣隊がシリア入りしました。
しかし軍は、イスラム教の金曜礼拝の日となった6日に首都ダマスカス近郊、北西部イドリブ、中西部ホムスなどで、戦車も動員してアサド政権退陣を求めるデモ隊を攻撃、多数の死傷者が出ました。同国人権団体などによると、6日には約50人が死亡。3日から6日にかけての死者数は約300人に達したとされます。
国営シリア・アラブ通信は6日、同国政府が潘氏宛てに書簡を送ったと報道。そこでは「テロリスト組織による活動が、とくにアナン調停案の履行合意後にエスカレートしている」などとし、「テロ」を口実に今後も攻撃を強化する姿勢を示唆しました。
こうした事態を受け、潘氏の報道官は6日の声明で、10日までに軍隊を撤退させるとのシリア政府の通告について、「10日の実施期限まで殺りくの継続を認めるものではない」と不快感を表明。女性や子どもを含む無辜(むこ)の市民への攻撃を「遺憾だ」とし、「シリア当局は人権や国際人道法の重大な違反に完全に責任を負っている」と指摘しました。
こうした攻撃が続くなか、隣国トルコに連日多数の避難民が脱出しています。5、6の両日だけで2800人が越境。ロイター通信は、シリア軍が国境地帯で、銃撃や地雷敷設で、避難民の越境を阻止しようとしていると伝えました。