2012年4月1日(日)
クウェート 賃上げ勝ち取る
税関・航空労働者 大幅25%も
「アラブの春」で権利意識変化
中東屈指の産油国、クウェートの税関で働く労働者や国営航空労働者がこのほど、ストライキ実施の末、25%の大幅な賃上げを勝ち取りました。これまで潤沢なオイルマネーによって反政府運動を抑えてきた同国ですが、昨年中東を席巻した「アラブの春」にも後押しされ、国民の権利意識に変化があらわれています。
(野村説)
ロイター通信によると、税関で働くクウェート人、約3000人は3月中旬に1週間にわたるストで賃金の引き上げを達成。国営航空の従業員は昨年、30%の賃上げに成功していましたが、さらなる引き上げを求め18〜20日まで3日間のストをたたかいました。いずれも21日に合意し、ストを中止しました。
「泣く子どもをチョコレートでなだめるようなものだ」(経済コンサルタント)と、政府の大幅賃上げ同意に批判の声が上がる一方、大手組合の代表は、昨年のインフレ率は直近の3年間で最も高い4・8%を記録し、それでもここ数年の賃金は生活費を満たしていないと主張します。
同国は世襲制の首長国家で、首相の任免権を持つ首長に実権が集中。国民の9割が公務員で輸出収入の95%を占める原油と、約3分の2を占める出稼ぎ労働者に経済を依存しています。
中東情勢が「アラブの春」で揺さぶられた昨年、クウェートでは選挙権を持たない遊牧民系の無国籍者「ビドゥーン」など、約1000人が住民の権利向上や差別的待遇の改善を求めてデモ行進。治安当局の放水や催涙弾などで鎮圧されています。
今年2月の国民議会選挙(定数50、任期4年)では、「アラブの春」を受けた改革要求の高まりのなか、政治家の腐敗撲滅などをかかげた体制内改革派のイスラム系野党勢力が34議席を獲得し躍進しています。