2012年3月15日(木)
シリア 北西部でも住民虐殺
議会選実施に疑問の声
【カイロ=小泉大介】軍による住民弾圧が激化の一途をたどるシリアの北西部イドリブで13日、約50人の住民が虐殺されたことが明らかになりました。同国のアサド大統領は同日、5月7日に人民議会選挙を実施することを決めましたが、弾圧が続く中で選挙が実施されることについて、意図を疑う声も上がっています。
イドリブでは過去数日間、軍が多数の戦車部隊を展開し、攻撃を集中してきました。ロイター通信が人権活動家の話として伝えたところによると、12〜13日にかけ、同地から避難しようとしていた住民ら50人以上が軍によって殺害され、多くはモスク(イスラム教寺院)に遺棄されました。中東の衛星テレビ・アルアラビアは死者は55人と報じました。
12日には、中西部ホムスで女性と子ども45人が殺害されたことがわかったばかり。民間人虐殺が相次ぐ事態に、アラブ連盟のアラビ事務局長は13日、「人道上の犯罪」だと厳しく批判し、「独立した国際機関による調査で事実と責任を明らかにしなければならない」と声明しました。
一方、国営シリア・アラブ通信は13日、アサド大統領が人民議会(国会、定数250)選挙の実施を決定したと伝えました。同国では、2月26日の憲法改正国民投票で、アサド大統領が党首を兼ねるバース党を「国家を指導する政党」とする規定の削除などが行われました。選挙はこの新憲法にもとづき実施されます。
アサド政権に、「民主化」を進めることで住民弾圧に対する国際社会の批判をかわす狙いがあることは疑いなく、反体制派組織などからはすでに「われわれが求めているのはあくまでアサド大統領の退陣だ」などの反発が出ています。