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2012年2月15日(水)

富裕層増税で赤字削減

米大統領 予算教書を提出

大企業税制見直しも

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 【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領は13日、2013会計年度(12年10月〜13年9月)の予算教書を議会に提出しました。雇用対策など短期的な経済刺激策を盛り込む一方、歳出削減や、富裕層増税などの「歳入改革」により、今後10年間で4兆ドル(約311兆円)の財政赤字削減を目指すとしています。


 オバマ氏は同日、バージニア州で演説し、財政再建に向け「公正な負担の分かち合い」を目指すと強調。同時に、景気回復を支える施策が必要だと強調しました。

 歳出総額は3兆8000億ドル(約295兆円)。財政赤字は、12年度が1兆3270億ドル(約103兆円)で過去2番目の規模となり、13年度は9000億ドル(約70兆円)まで縮小するとの見通しを示しました。

 歳入改革の柱の一つは、年収25万ドル(約1946万円)以上の富裕層への増税です。ブッシュ前政権時代から続く富裕層減税の廃止や、年収100万ドル(約7787万円)以上の富豪に最低30%の税率を課すとした「バフェット・ルール」の適用により、10年間で1兆5000億ドル(約116兆8000億円)の税収増を見込んでいます。

 海外に雇用を移転する企業への税控除の廃止など、大企業税制の見直しも盛り込みました。

 経済対策では、オバマ氏が1月の一般教書演説で提案した中間層や製造業重視の施策が盛り込まれています。中間層向けには失業給付の延長、社会保障税の減税延長で3500億ドル(約27兆2500億円)を充当。新規に雇用を増やした中小企業への税控除や、海外から国内に雇用を戻した製造業企業への税控除も盛り込んでいます。

 野党・共和党は、すでに富裕層増税や財政赤字継続に強く反発しており、予算教書の内容がそのまま立法化される見込みは薄くなっています。11月の大統領選挙に向け、与野党間の激しい議論を呼びそうです。

解説

1期目総仕上げなるか

 オバマ米政権1期目最後となる今回の予算教書は、空前の財政危機の中、富裕層向けの優遇税制の転換で歳入増を図り、インフラ整備など公共投資を通じた雇用増や景気回復を目指しています。

 税制では、年収100万ドル以上の富豪に最低30%の税率を課すとしています。株式配当や譲渡益の最高税率が低く抑えられているために、富豪ほど税負担が軽くなっている現状の是正を図ったもの。「格差是正」を求めて広がっている運動とも合致しています。

 失業者と、やむなくパート労働についている人を加えた不完全就業率が20%近い中、雇用増は米国民の最大の要求。オバマ大統領は昨年9月に4470億ドルの雇用創出策を提案しましたが、共和党の反対で行き詰まっています。今回、3500億ドル以上の短期の雇用成長策を提示し、大統領選挙でも是非を問う構えです。

 また「公正な負担の分かち合い」(オバマ氏)を打ち出し、高齢者・低所得者向けの医療保険制度の予算や農業補助金など幅広い分野で、今後の歳出削減の方向を示し、国防予算削減にも踏み出しました。

 オバマ氏は2009年2月、就任直後の施政方針演説で「経済再生」とともに「持続的繁栄のための新たな基盤の構築」を掲げ、エネルギー、医療、教育分野への投資を重点化しました。

 1期目総仕上げの年に、その方向で顕著な変化をつくることができるのか。オバマ政権に問われることになります。(西村央)


 予算教書 米三大教書の一つで、大統領が議会に示す会計年度予算(その年の10月から翌年9月まで)の編成方針。米国では憲法で三権分立が厳格に決められ、予算編成は立法府である議会が行います。予算教書は行政府の長である大統領から議会に対する勧告にすぎず、法的な拘束力はありません。


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