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2012年1月27日(金)

主張

介護報酬改定

“在宅ケア難民”を増やすな

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 厚生労働省が2012年度の介護保険報酬を決定しました。報酬全体は前回改定と比べ1・2%増やしましたが、これまで国費だった介護労働者の賃金引き上げ分を介護報酬に組み込んだため、実質0・8%のマイナス改定です。介護施設からの利用者追い出しを促進することを鮮明にするなど、「保険あって介護なし」の実態を加速させる方向です。誰もが安心して利用できる制度を求める国民の願いに逆行する改定は許されません。

「一体改悪」実行の第一歩

 介護報酬は、介護事業者に支払う「公定価格」であるとともに、介護サービスを具体的に決めるもので3年ごとに改定されます。12年度は、2月に決める医療の診療報酬改定(2年ごと)と同じ年度にあたる6年に1度の節目です。

 厚労省は、同時改定を「社会保障・税の一体改革」の実行・具体化の第一歩と位置づけ、医療・介護の本格的な削減・抑制方針を打ち出しています。「団塊の世代」が75歳になる25年を照準に、医療・介護の大幅抑制をめざし、報酬改定をその手段にしています。

 改定の大きな柱は「地域包括ケアシステム」の構築です。「医療から介護へ」「施設から在宅へ」の名の下で、病院や介護施設から高齢者を締め出す狙いです。

 改定された介護報酬は、施設介護に極めて冷たい仕打ちです。特別養護老人ホームでは、要介護度の高い人を受け入れる施設ほど報酬を高くし、「中軽度者」の入所を困難にしました。また「個室入所」を優先するとして相部屋入所への報酬を減額しました。老人保健施設では、ベッドの回転率が高いなどの施設を評価する報酬を新設し、入所者の早期退所を迫ることを盛り込みました。

 このようなやり方は、特養の入所待機者が全国に42万人以上もいる実態を解決する責任を国が事実上放棄するものです。報酬改定によって施設介護から強引に引きはがし、高齢者の行き場をなくすことはするべきではありません。

 「在宅に移行」した高齢者への介護の保障はありません。日中・夜間に在宅の高齢者を定期的に訪問する「24時間地域巡回型サービス」を新設するとしていますが、担い手となる介護士や看護師などの体制を確保する方向も不十分です。必要な医療や介護がきちんと提供されるかどうかは明確ではありません。

 掃除や調理などの家事を手助けする「生活援助」の時間を大幅に制限することは、ヘルパーを疲弊させ、訪問介護事業所に減収をもたらすもので、本末転倒です。

 介護にかかる公的なお金を削るために、介護を必要とする人が制度から排除される「介護難民」「在宅ケア難民」を増大させることはしてはなりません。

安心の制度構築こそ

 介護報酬改定による制度の改悪はただちに中止するべきです。2000年に施行されて以来、次々と改悪された介護保険制度は抜本的な見直しが必要です。緊急に求められるのは、特養待機者を解消するための緊急の基盤整備です。在宅介護では十分な体制づくりに国が責任をもつべきです。国庫負担の引き上げをしなければなりません。利用者・家族に新たな負担を強いる「一体改革」は中止・撤回しかありません。


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