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2012年1月23日(月)

ずさんな調査に不明朗補助金1363万円

ヘルパー時間短縮「根拠」

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 政府・厚生労働省が介護給付費削減のため来年度の介護報酬改定でホームヘルパーの生活援助の基本的な提供時間(現行30分以上60分未満)を45分未満に短縮しようとしている問題で、その根拠とされた調査に、厚労省の不明朗な補助金交付があったことが分かりました。


データは厚労省

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(写真)EBP社が厚労相に提出した補助金交付申請書(後方)と、調査事業計画書の調査方法を記した部分

 同調査は実際の援助時間の計測もせず、記憶を頼りにした、ずさんなものであることが明らかになっています。

 補助金が交付されているのは株式会社EBP(政策基礎研究所)=東京都中央区、市田行信CEO、資本金200万円=の「訪問サービスにおける提供体制に関する調査研究事業」。調査のデータ収集を厚労省が実施していたにもかかわらず、同社がしたかのような補助金の申請書を提出し、厚労省はこれにもとづき2011年度の老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進事業分)として昨年10月19日、1363万6000円を交付決定しています。

 同社が補助金の交付申請のため同7月8日、厚労相に提出した「調査事業計画書」には、「電子メールにより質問票を配布し調査」と「調査方法」が記されています。同補助金を担当する同省老健局総務課も「EBPは自分で(データ収集を)やるスタイルで申請書を出している」と認めます。

 ところが実際にデータ収集をしたのは厚労省老健局老人保健課であることが同12月1日、日本共産党の田村智子参院議員の質問で明らかになりました。同省の宮島俊彦老健局長が「厚生労働省の老健局老人保健課で本年5月に調査票を配布し、調査を実施した」と答弁しました。実際、同5月16日に同課が各都道府県介護保険主幹課長に依頼文書を出し、質問票を送付しています。

法に抵触の疑い

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(写真)株式会社EBPが3階に入るビル=東京都中央区(画像を一部加工)

 EBP社は本紙の取材に、回答済みの調査票を厚労省からメールで受け取り「収集して、(分析に必要な)データセットをつくるのはうちがやった比重が大きい。それも厚労省さんにだいぶ手伝ってもらっている」としつつ、「調査票の設計、配布に関しては9割方は、厚労省さん」と認めています。

 同総務課によると、同補助金は事業終了後、1カ月以内にEBP社が実績報告書を提出、厚労省が審査し交付額を確定する仕組みだといいます。総務課は「(確定で交付額が)減額されるかは分からない」としています。

 補助金適正化法(第6条)は、交付決定にあたり「各省各庁の長」が補助事業等の目的および内容が適正か、金額算定に誤りがないか等を調査するよう定めています。同事業への不明朗な交付決定は同法に抵触する疑いがあります。


解説

短縮方針撤回を

 厚労省は25日の社会保障審議会介護給付費分科会に、訪問介護の生活援助の時間短縮を諮問する予定です。しかしその根拠とされた調査は計測も記録もない、ずさんなものだったことが分かり、その上、同調査をめぐる不明朗な補助金交付が明らかになりました。

 厚労省は自ら調査を設計してデータ収集をしていたにもかかわらず、その事実を隠し、日本共産党の田村智子参院議員の昨年12月1日の質問直前まで、本紙の取材にも「調査はEBPが行った」と一貫して答えてきました。

 時間短縮の「根拠」を作り出すため、自らずさんなデータ収集をおこなっておきながら、民間会社が“中立的”に行ったように見せかけ、その結果の一部を介護給付費分科会に提出し、時間短縮の根拠にしようとしたのではないかとの疑念すら浮かび上がります。

 さらにその調査結果はいまだ一部しか公表されておらず、全容が分からない調査結果を時間短縮の根拠とすることの妥当性も問われています。

 調査のずさんさが明らかになって短縮の根拠が崩れ、さらに背景には不明朗な補助金の交付まで明らかになったいま、厚労省は生活援助の基本的提供時間の短縮方針を撤回するべきです。

 (内藤真己子)


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