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2012年1月11日(水)

困窮する県外避難者

「負担数百万円…」

原発災害10カ月 東京へ

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 原発事故や震災で故郷を離れざるをえなくなった、「県外避難者」の生活が困窮しています。被災自治体からの支援は届かず、避難先自治体の支援も手薄―。専門家らは、長期の避難先となる住居の提供や生活支援が不可欠と指摘します。(本田祐典)


写真

(写真)避難先で、段ボール箱を机にして勉強する子どもたち。食卓もこの段ボール箱(都内の避難者が昨年8月に携帯電話で撮影)

 「避難での負担は数百万円。でも東電や行政からお金をいっさいもらっていない」

 東京都内で小学校低学年の子ども2人と避難生活を送る、福島県いわき市の40代女性。

 子どもの健康を考えて、原発事故の直後から北陸地方、神奈川県、東京都と転々。現在は、都が仮設住宅のかわりに提供する公的住宅で暮らします。

届かぬ支援

 当面の生活費や家具・日用品の購入のため、定期預金を次つぎ取り崩しました。子どものために積み立てた学資保険も解約。家計は破たん一歩手前です。

 「行政は何もしてくれない…」と女性。

 被災地の仮設住宅と違い、都内で暮らす避難者には暖房器具や生活必需品の支給がありません。入居後しばらく、子どもたちは段ボール箱を机にして勉強しました。

 入居期限は来年の夏まで。放り出されれば、避難生活を続けるのは困難です。

 少しずつ新しい学校になじみ始めた長女は、「学校のクラブ活動をしたいけど、いつまで今の学校にいられるかな」と口にします。女性は、「お母さんにもわからないよ」と答えるしかありません。

 国が指定する避難区域外からの「自主避難」。東京電力からの賠償仮払金や、義援金も手元に届きません。

過労状態で

 家計を支えるのは自宅に残る夫です。原発事故後、警戒区域内の会社を退職して自営業者になりました。仕事が忙しく、妻子の避難先に会いに来られたのは4回だけです。

 「電車賃を節約しようと、夫は過労状態なのに寝る間を削って東京まで車を運転する。『会いに来るより休んで』と言うしかない」

 正月、ようやく3日間を家族4人で過ごしました。父親が福島県に帰ると、長女は「パパのにおいがする」と枕を抱き泣きました。長男は興奮状態が続き、身体をゆすり続けています。

 女性は、ポツリとこぼします。「安心して子どもを育て、普通に生活したいだけ。それすら許されないの?」

“避難先で支援体制を”研究者ら

復興・減災フォーラム

 8、9日と兵庫県西宮市で開かれた「復興・減災フォーラム」(日本災害復興学会、関西学院大災害復興制度研究所の共催)では、避難者支援の課題を研究者、支援者らが語りました。

 福島大学災害復興研究所の丹波史紀准教授は今回の災害による被災者の特徴を、避難の長期化や県内外に離散しての孤立、避難先での困窮にあると分析し、「避難先での生活再建や支援の枠組みがない。それが避難者を困窮におちいらせている」と指摘しました。

 栃木県内の避難者を支援する、とちぎ暮らし応援会の君嶋福芳(ふくよし)運営委員は、「阪神大震災のときの孤独死のような問題が懸念される」と語り、生活支援員などによる避難者の見守りが必要だと強調しました。

 福井県の支援団体「ひとりじゃないよプロジェクト・福井」の内山秀樹仁愛女子短期大学教授は、「甲状腺の検査で被災者に福島県に来いというが、福井県から10時間、交通費が5、6万円はかかる」と示し、避難先での被災者の健康管理や相談の体制を早急につくるべきだとしました。

 日本災害復興学会の室ア益輝会長は、「県外避難者の姿が見えず、その人たちに必要な支援ができていない」と指摘。阪神大震災でも県外に避難した被災者の所在が分からず支援が困難になったことにふれ、避難先の把握と支援体制の構築が必要だと提起しました。


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