2012年1月6日(金)
米石油企業に賠償命令
原油流出 住民に被害
エクアドル控訴審
【メキシコ市=菅原啓】南米エクアドル北東部スクンビオス県の控訴審はこのほど、米大手石油企業シェブロン社に対し、原油流出による環境破壊についての謝罪と被害住民への賠償金支払いを命じた一審判決を支持し、一審判決が求めた賠償金の倍の額を支払うよう求める判決を言い渡しました。賠償を求めてたたかってきた住民は歓喜の声を上げています。
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同県では1964年から90年まで、米企業テキサコ社(2001年にシェブロン社が買収)が操業していました。産出原油の流出などにより、土壌や水源が汚染され、付近の先住民や農民らに深刻な健康被害が発生しています。
住民らは被害者団体を結成し、01年にシェブロン社を相手取って提訴。昨年2月には、同県の地方裁がシェブロン社に対し、公式の謝罪と、賠償金約86億ドル(約6600億円)ならびに、環境保護法違反として賠償金の10%に当たる罰金の支払いを命じていました。
シェブロン社側の不服申し立てを受けて開かれていた同地方裁の控訴審は3日の判決で、昨年の一審判決を全面的に支持する判断を示しました。
被害者団体の代表ルイス・ジャンサ氏は4日、判決を「正義を勝ち取る長いたたかいの中にあるエクアドル国民にとって非常に重要な勝利だ」と指摘。先住民セコジャ族の代表ウンベルト・ピアグアヘ氏は、たたかいの目的は「次の世代、われわれの子どもらの未来を守ることだ」「このたたかいを誇りに思う」と語りました。
一方、シェブロン社は3日に発表した声明で、今回の判決受け入れを拒否し、判決は「エクアドルの司法制度の腐敗を示すものだ」などと非難。「エクアドル国外での法的手段に訴えることを目指す」と述べています。
原告団のファハルド弁護士は、環境汚染が原因でがんを患い死亡した住民が過去15年間で2000人に上ると報告。犠牲者を増やさないためにも、早期の訴訟終結と賠償金による環境回復の緊急性を訴えました。
またシェブロン社が賠償金支払いを拒む場合は、同社の所有する製油所など海外資産の差し押さえを含め「可能なあらゆる法的措置をとる」考えを明らかにしています。