2011年12月29日(木)
「宗派対立」が深刻化
イラク 議会の再選挙要求も
【カイロ=小泉大介】米政権が「安定したイラク」実現を宣言したはずの同国で、爆弾テロ多発などの治安悪化に加え、政治的混迷と「宗派対立」再燃の危機がいっそう深まっています。有力政治家・勢力からは、昨年3月に行われた連邦議会(国会)選挙をやり直すべきだとの声が高まっています。
イラクではこの間、イスラム教シーア派のマリキ首相が、テロ関与の容疑で同スンニ派のハシミ副大統領への逮捕状発付を命令。一方、現在も北部クルド自治区に滞在するハシミ氏は容疑を完全否定し、裁判も拒否するなど、緊迫した事態が続いてきました。
スンニ派のムトラク副首相は、国防相、内務相も兼務するマリキ首相を「サダム・フセイン以上の独裁者だ」と批判。これに対しマリキ首相は、同副首相の更迭も承認するよう内閣に求めています。
ハシミ副大統領は25日、外国メディアのインタビューに対し「もしわれわれが屈服するようなことがあれば、イラクは再び専制政治に陥ることになる」と表明しました。
米国のオバマ大統領は、戦争と占領を合理化するため、「われわれは安定し、独立した主権国家となったイラクを後にする」(14日)と述べていました。しかし、今回の事態を受けバイデン米副大統領は25日にマリキ首相と電話会談し、危機打開のために対話の場を設けるよう訴えました。
これに対しハシミ副大統領やムトラク副首相が所属する世俗派とスンニ派の連合「イラキーヤ」は同日、対話参加を拒否しました。
政治的危機が深まるなか、連立政権に加わるシーア派指導者サドル師のグループの幹部、アルアラジ氏は26日、「われわれの政治パートナーは、イラク分裂の脅威に対する解決策を見出すことはできない」とし、連邦議会解散と再選挙を要求しました。
クルド自治政府のバルザニ議長も同日の声明で、「現在の危機は、2003年の占領開始以降、最も深刻なものであり、内戦を引き起こす恐れもある」とし、政治指導者による対話が実現しない場合には早期の選挙実施を求めました。