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2011年12月22日(木)

福島原発 廃炉まで30〜40年

道筋は不透明 政府・東電が工程表

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 政府と東京電力の福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)事故中長期対策会議の初会合が21日開かれ、1〜4事故号機の廃炉に向けた工程表を策定しました。策定された工程表は3期に分かれ、廃炉まで30〜40年を目標にしていますが、その道筋はきわめて不透明です。

 第1期は最も多くの使用済み核燃料が入っている4号機の核燃料プールで燃料取り出しを始めるまでの期間で2年以内が目標。大気中への放射性物質放出の低減や高濃度放射能汚染水処理を安定的に継続することを掲げています。第2期は10年以内を目標に1〜3号機から溶けた燃料の取り出しを始めます。この間に、高濃度放射能汚染水処理を完了させるとしています。

 第3期は廃炉作業が終了する期間で30〜40年後が目標です。溶融燃料を取り出した後、原子炉の解体を終える計画です。

 溶融燃料の取り出しでは、2015年度末ごろから格納容器下部を補修し、水で満たす冠水作業に着手。19年度半ばごろから圧力容器内の本格調査に入り、21年度末までに取り出しを始めるとしました。

 これらの作業は、いずれも高い放射線量の場所で行わなければなりません。このため、遠隔操作ロボットなどをはじめとした多くの技術開発が求められるとしています。


解説

「工程表ありき」改め状況把握し危険防げ

 今回の工程表は、野田佳彦首相が16日に福島第1原発が「冷温停止状態」になったとして「事故の収束」を宣言したのを受けて策定されたものです。

 政府と東電は、冷温停止状態を圧力容器底部の温度が100度以下であること、放射性物質の放出が抑制、管理されていることと定義しました。しかし、東電自身、圧力容器底部の温度の測定値は誤差が大きいと認めているほか、4日には同原発から大量の放射性物質を含む汚染水が海へ流出したことが明るみに出ました。政府と東電の判断基準に照らしても、事故が収束したなどとはいえません。

 そもそも、政府も東電も、事故発生から9カ月たった今も1〜3号機の原子炉内の状況を、正確につかんでいません。11月に2号機の格納容器内の気体を分析した結果を見て、核燃料が連続的に分裂する再臨界が起こっているのではないかと慌てふためいたことからも明らかです。野田首相は、政府と東電が決めたスケジュールに沿って収束を宣言したといわれても仕方ありません。

 工程表の策定後、記者会見した枝野経済産業相と細野原発事故担当相は、溶けた燃料の取り出しをはじめ、工程表を進捗(しんちょく)させるためには、さまざまな技術的課題があると認めました。しかし、原子炉内で溶けた燃料がどうなっているのか不明な状況では、どのような技術開発をしたらいいのかさえ見当がつかないでしょう。廃炉への道筋は不透明です。それでも、工程表で決めた期間が過ぎたら達成したと言うつもりでしょうか。

 いま、やるべきことは、現状に目をそむけてスケジュールを決めることではなく、原子炉内部の状況を正確に把握して起こりうる危険を未然に防止すること、大量の高濃度放射能汚染水などが外部に出ないよう万全を期すことです。 (間宮利夫)

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